2023 Fiscal Year Annual Research Report
近現代日本における仏教の変容と展開―寺院と社会環境との相互作用をめぐる比較研究
Project/Area Number |
22KJ1303
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小高 絢子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 現代仏教 / 仏教寺院 / 都市寺院 / 社寺参詣 / ツーリズム / 都市化 / 観光化 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本仏教の変容と展開を、仏教寺院と檀家・信徒を超えた様々な人々との関わり、それによる変化に着目しながら明らかにすることを目的とし、堀之内妙法寺や柴又帝釈天を事例に、その共通点と差異の比較、考察を目指すものであった。2023年度は、前年度の調査を引き継ぎながら、堀之内妙法寺の文献調査、行事の参与観察、講中への聞き取り調査等に着手した。 堀之内妙法寺における文献調査では、大正期から現在に至る堀之内妙法寺門前の空間構成の変化を分析した。その結果、当該地においては、戦後の都市交通網の発達、宅地化、人口増加によって、参道の景観が、参詣者のための門前町から、地域住民の衣食住に根差した地元の商店街・住宅街へと変化したことが明らかとなった。また、そのような都市化による人口流動や景観変化は、檀信徒の構成や信仰形態にも影響を与えており、堀之内妙法寺の2つの講中では、「都市化」によって地元住民の構成が流動的に変化してきたために、地縁・血縁的な行事の担い手の存続が不可能になり、講中の構成員が伝統的な地縁・血縁に基づくものから、友人付き合いの延長や個人的に祭礼に関心がある人々が選択的に参入するといった、選択縁的なつながりによる現代的な形態へと変化していったという特徴が見出された。 全体として、調査の結果、柴又帝釈天は観光化、堀之内妙法寺は都市化といった現代の社会現象の影響を強く受けており、それらが行政の介入や商店街とのつながりの希薄化など、檀信徒を超えた多くの世俗的アクターとの関わりの変化をもたらし、さらに参詣者や檀信徒の構成・信仰形態にも変化を生じさせる要因となっていることが明らかとなった。いずれも、都市寺院における現代的な変容や、その特徴の一側面を示していると考えられる。今後は成果報告や論文化のほか、都市部における他の寺院との比較研究も視野に入れつつ、個人研究に引き継ぐ予定である。
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