2022 Fiscal Year Annual Research Report
筋細胞リモデリングにおけるオートファジーの意義の解明
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22J15316
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村川 直柔 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 筋細胞 / トランスクリプトーム解析 / スクリーニング / オートファジー関連遺伝子 / 筋小胞体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエの幼虫のほとんどの筋細胞は、蛹の時期に細胞死を起こすが、一部の筋細胞は生き残り、成虫の筋細胞に作り変えられる。このとき、幼虫の筋細胞のオルガネラが大規模に分解された後、再形成される様子が見られる。この一連の現象を筋細胞のリモデリングと呼ぶ。私の所属する研究室では、この筋細胞のリモデリングにおけるオルガネラ分解に、細胞内分解系であるオートファジーが重要であることを明らかにした。しかしながら、筋細胞のリモデリングにおいて、オートファジーにより何が分解され、その分解にどのような生物学的な意義があるのかは十分にわかっていない。そこで、本研究ではまず、オートファジーの不全が筋細胞のリモデリングに与える影響を理解するため、経時的なトランスクリプトーム解析を行った。野生型系統とオートファジー不全系統の筋細胞のリモデリングに伴う遺伝子の発現の変動を比較した結果、一部の遺伝子で統計的に有意な発現量の変化が見られたが、それらの遺伝子の発現量の変化は、全体の変化のわずか4%程度であった。したがって、オートファジーの不全が、筋細胞のリモデリングに伴う転写調節に与える影響は小さいことがわかった。一方、発現量変動を数学的な手法を用いて詳細に解析したところ、筋細胞のリモデリングのオートファジーが亢進する時期に、発現が上昇する遺伝子群があることがわかった。そこで、そこに含まれる遺伝子に対してRNAiスクリーニングを実施し、筋細胞のリモデリングにおけるオートファジーに関わる新たな遺伝子を4個同定した。そのうちの一つの遺伝子の詳細な解析から、この遺伝子は、筋小胞体に局在していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、筋細胞のリモデリングにおいて、オートファジーによって何が分解され、その分解にどのような意義があるのか明らかにすることを目的としている。この目的の達成のため、トランスクリプトーム解析やイメージング解析を計画していた。トランスクリプトーム解析については、計画通り実施したものの、オートファジー不全系統で当初予想していたストレス関連遺伝子の発現の上昇などは見られなかった。そこで現在、筋細胞のリモデリングにおけるオートファジーによるオルガネラ分解の意義として、筋細胞内のオルガネラを一度分解して、オルガネラを再形成するためのスペースを生み出す働きがあるという可能性を検討している。その一方で、トランスクリプトーム解析で得られた発現変動情報をもとに、遺伝学的なスクリーニングを行ったところ、筋小胞体に局在し、オートファジーに関わる遺伝子が同定できた。これらのことから、完全に計画通りの結果が得られているわけではないが、全体として筋細胞のリモデリングにおけるオルガネラ分解について、情報が集まり、論文の発表へ研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトーム解析の結果、オートファジーが不全になった場合でも細胞内でストレス応答が起こっているわけではなかった。そこで、一つの可能性として、オートファジーによるオルガネラ分解は、筋細胞のリモデリングの後半に見られるオルガネラの再形成のためのスペースを生み出すために重要であると予想している。それを検討するため、蛍光イメージングなどを用いて、オートファジー不全の際に蓄積したオルガネラが、オルガネラの再形成を妨げている様子を直接観察する予定である。 今回、新たに同定された遺伝子は小胞体に局在し、その遺伝子をノックダウンするとオートファジーに不全が見られたが、どのようにオートファジーに関わるのかはよく分かっていない。近年、細胞質成分を包み込むオートファゴソームが伸張する際の膜脂質の供給源として、小胞体が有力な候補として考えられている。新たに同定された遺伝子の一つは、筋小胞体に局在していたことから、その遺伝子がオートファゴソームの形成の際の脂質膜の輸送などに関わるのではないかと考えている。そこで、今後は今回同定された遺伝子の機能解析の際に、膜脂質の輸送などをヒントに蛍光イメージングや、電子顕微鏡を用いた形態的な観察を行う予定である。
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