2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J15892
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 愛里 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | モノアミン / 膵臓発生 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マウス生体の膵臓発生におけるモノアミントランスポーター2 (VMAT2) やモノアミンの制御機構を明らかにすることを目的とした。まず、胎生12.5日目の膵原基をVMAT2阻害剤Tetrabenazine (TBZ) 存在下で7日間培養した。免疫組織化学による解析は、膵β細胞量の増加と膵管構造の複雑化を示した。そこで、膵臓構造形成に対する影響をより詳細に検証するため、胎生12.5日目の膵原基をTBZ存在下で2日間培養しその膵管構造を解析したところ、膵管の分岐点が増加した。胎生12.5日目頃には既に神経細胞が膵臓に存在することが知られている。そこで、この効果が膵臓細胞由来か検証するため、胎生12.5日目の膵原基を免疫組織化学で解析した。ドパミン合成酵素Tyrosine hydroxylaseとAromatic and L-amino acid Decarboxylase (AADC) 二重陽性細胞がVMAT2を発現しており、ドパミン合成と貯蔵が可能な細胞が観察された。また、その細胞は膵β細胞マーカーのインスリンと膵α細胞マーカーのグルカゴンも発現していたので、膵臓細胞であることも分かった。マウス成体の膵β細胞において、VMAT2 阻害下などの正常なモノアミン取り込みができない場合、細胞質でモノアミンオキシダーゼによるモノアミン分解とそれに伴うReactive oxygen species (ROS) 産生が起こる。そこで、膵原基のROS含量を検証したところ、コントロール ではAADC陽性細胞のROS含量が高く、その細胞周辺で遠位の細胞ほどROS含量が低くなる濃度勾配ができていた。そのROS含量が高い細胞を避けるように膵管細胞が形成されていた。一方、VMAT2阻害下ではROSの濃度勾配が失われており、膵管構造の抑制機構も失われていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ計画通りに進んでいる。マウス膵原基において、VMAT2を阻害することは膵β細胞量の増加につながること、膵管の分岐点増加を引き起こすことを明らかにした。また、膵管の分岐点増加は、ROS産生が原因であることも示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
VMAT2陽性細胞を中心にROSの濃度勾配が形成され、膵管の過形成を抑制していることが示唆された。このROS濃度勾配どのように形成されるかを今後検証したい。また、今回VMAT2阻害が膵管構造形成の制御機構について明らかにできたが、膵β細胞量を増加させる機構については明らかにできていない。そこで、VMAT2阻害による膵管の分岐点増加が内分泌細胞にどのように影響を与えるかを明らかにしたい。
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