2022 Fiscal Year Annual Research Report
1989年版幼稚園教育要領の形成過程研究:戦後日本の幼児教育認識と政策展開から
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22J12526
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
藤谷 未央 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-02-01 – 2025-03-31
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Keywords | 幼児教育 / 1989年版幼稚園教育要領 / 文部省 / 中央教育審議会 / 生涯教育 / 戦後日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の幼児教育が小学校教育に対する独自性を獲得する画期であった1989年版幼稚園教育要領の形成過程を、戦後日本における幼児教育認識の変遷と幼児教育政策の展開過程に着目し歴史的に明らかにすることである。本年度実施した研究の概要は以下の通りである。 第一に、第13期中央教育審議会(1981-1983年設置)における幼児教育の議論の内容を論文にまとめ、査読を経て『人間文化創成科学論叢』に掲載された。本論文では、1980年代前半の中教審で、幼稚園と小学校の連続性についてなど幼児教育に関する議論が一定程度なされていたものの、会期中に結論に至らなかった論点も残されたことを明らかにした。 第二に、第11期・第12期中央教育審議会(1977-1981年設置)における議論の分析を行い、日本乳幼児教育学会にて発表した。発表のなかでは、中教審が生涯教育政策を検討する過程でなされた幼児教育の方向性に関する議論は、家庭の教育役割を重視する考え方と関連していたことを明らかにした。 第三に、幼児教育の積極的な普及充実の方向を示す答申を作成した、第8期・第9期中央教育審議会(1967-1971年設置)関係者の幼児教育認識を明らかにするため、広島大学文書館にて「森戸辰男関係文書」の調査を行い、関連資料を収集した。 第四に、1980年代における幼児教育関係者の幼児教育認識を明らかにするため、特に「幼稚園教育要領に関する調査研究協力者会議」関係者の思想に着目し、分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、半年間の研究期間の中で国内学会における発表を行うとともに、査読付きの研究論文を刊行することができた。学会発表時や論文査読の過程では、中央教育審議会における幼児教育政策の議論の特徴やその変遷に関して、博士論文の執筆につながる視点を得た。 また、今年度実施した広島大学文書館における資料調査では、1971年に「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について(答申)」(通称、「四六答申」)を提出した中央教育審議会における幼児教育に関する審議資料や、当該中教審の内部に設置され、初等・中等教育改革の基本構想を議論した第25特別委員会の審議資料を中心に、資料収集を進めた。その中では、国立公文書館に所蔵のない関係資料や、当時の中教審会長であった森戸辰男のメモ入り資料を入手することができた。これらの資料については、国立公文書館に所蔵されている別資料や文部省発行誌とあわせて、次年度の学会発表に向けた分析を進めているところである。このような事柄から、今年度は研究を順調に進展させることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、先に述べた「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について(答申)」を提出した中央教育審議会でなされた幼児教育の議論に関する研究を重点的に進めることにしたい。そこで、あらためて中教審や四六答申にかかわる先行研究の検討を行う。そして今年度の広島大学文書館における資料調査によって入手した資料のほか、中教審の総会・特別委員会の速記録、配布資料、また文部省発行誌の分析を進め、答申の作成過程でなされた幼児教育の議論やその特徴に関して検討する。研究の成果は教育史学会などの国内学会において発表したのち、研究論文としてまとめることを予定している。 また博士論文の提出に向け、1980年代の幼児教育関係者が幼児教育の意義・役割をいかに認識していたかを明らかにする研究を引き続き実施する。また1960年代から1980年代の国会における幼児教育認識や、同時期における一般大衆の幼児教育認識の特徴を明らかにする研究にも着手する。研究成果の一部は、再来年度の国際学会にて発表できるよう、エントリーを行う予定である。
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