2022 Fiscal Year Annual Research Report
Live-imaging analysis to reveal spatiotemporal dynamics of cyanobacterial light signaling
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22J40052
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
榎本 元 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2022-07-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞運動 / 走光性 / バクテリア / 光応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
バクテリアの細胞はよりよい環境に移動することで、変化する環境に適応することができる。ラン藻(シアノバクテリア)は光合成によって生育するバクテリアである。光が生育に必須であることを反映するように、ラン藻は環境の光条件に従って運動のふるまいを精巧に変化させる。本研究は主に顕微鏡を用いて生きた細胞を観察することにより、ラン藻細胞が光を感知して運動の振る舞いを変化させるのに必要な細胞内における分子のふるまい 、および細胞集団における個々の細胞のふるまいを理解することを目指すものである。 本年度は最初の二ヶ月間、ドイツ・フライブルク大学にて研究をおこなった。どのタンパク質が二次メッセンジャー分子c-di-GMPを結合してラン藻の細胞運動を制御するのかを明らかにするため、c-di-GMP 受容体の探索と評価を行った。細胞破砕液を用いて c-di-GMP 親和性クロマトグラフィーを行い 、質量分析による同定を経て推定 c-di-GMP 結合タンパク質の候補を得た。日本に帰国後、細胞運動のもつ生態学的役割を探るため、研究対象に用いている好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanusがもともと単離された和歌山県の湯ノ峰温泉で緑色の微生物マットのサンプリングをおこなった。顕微鏡観察および寒天培地上での生育実験により、これらのサンプルから光の向きを感知した細胞運動の存在を確認した。また、運動装置がいつ・どこで・どのように機能するのかを解明するため、Pilin線毛の特異的ライブイメージングを試みた。pilin タンパク質PilAにシステイン残基を導入し、蛍光ラベルされたマレイミド試薬を用いて特異的に線毛を可視化する技術を応用し、これまで解析が可能であったT. vulcanusに加えて、あらたに常温性ラン藻Synechocystis sp. PCC6803でも線毛の可視化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定どおり、c-di-GMP 受容体の探索と評価のためのc-di-GMP 親和性クロマトグラフィーを行い 、推定 c-di-GMP 結合タンパク質の候補を得ることができた。また運動装置がいつ・どこで・どの ように機能するのかを解明するためのPilin線毛の特異的ライブイメージングについても、実験が軌道に乗ってきている。また研究室で得られた分子的、細胞学的知見を生態学に広げるための、新たな環境サンプルの取得と安定的な培養条件の確立も達成できた。これらのことから、本年度の進捗はおおむね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は単離したラン藻のゲノム解析を行って種を同定するとともに、研究室に順化しすぎていない新規のモデル生物として細胞運動とバイオフィルム形成について解析を進めていく予定である。また推定 c-di-GMP 結合タンパク質の候補リストの中から、細胞運動にかかわる可能性が高いタンパク質について、蛍光ラベルされた c-di-GMPを用いた DRaCaLa 法を用いて結合を確認する予定である。
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