2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J20011
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
勝又 崇 一橋大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 異同文献 / 差異文献 / ローマ法 / カノン法 / ランゴバルド法 / 中世学識法 / リーガル・プルーラリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、ドイツのハンブルクを拠点とした在外研究を行った。第一に、マックス・プランク研究所が作成した中世の法文献に関する写本データベースにおいて、今回研究対象としている著作の一部を発見した。このデータを用いて、ヨーロッパ各地の図書館に史料の撮影を依頼した。また併せて、ハンブルク大学に所蔵されていた著作『モーセ法・ローマ法対照』の近世印刷本を撮影した。加えて、ランゴバルド法とローマ法を比較する異同文献の1912年に出版された刊本を入手した。 第二に、現地の研究者との交流と意見交換を行った。ハンブルク大学での学術報告シリーズに出席したほか、スイスのチューリヒで開催された『法史家大会』およびベルギーのブリュッセルで開催された『国際古代法史学会』(SIHDA)にも参加した。両学会ともに、学会報告の参観や参加者との意見交換によって、本研究の内容についても重要な示唆を得ることができた。 第三に、日本では入手が困難な、ローマ法とカノン法の関係に関する文献およびランゴバルド法に関する先行研究を収集した。加えて、調査を進める過程で関連性を検討するようになった、後期古代の法文献『モーセ法・ローマ法対照』に関する先行研究をも収集した。 第四に、各史料の来歴や時系列に着目した整理を順次開始した。 第五に、2021年度より続けていた、ザクセン法における命令不服従学説の成立において異同文献が果たした役割についての研究の成果を、雑誌『法と文化の制度史』に査読付き論文の形で発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異同文献や、中世ローマ法、カノン法、ランゴバルド法のそれぞれの法に関連する主要な先行研究を収集し、精読を進めることができた。 史料である、ローマ法とカノン法を比較する異同文献の写本の写真や情報を収集することはできたが、調査の途中でこれまで把握していなかった写本の存在を知ったため、完了することはできなかった。 加えて、ザクセンの異同文献に関する研究成果を論文にまとめ、発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、これまでに収集した資料を基に、ヨーロッパ法史における異同文献の位置づけを検討する。 第一に、2022年度までに収集が完了しなかった史料について、引き続き各図書館に複写依頼を行い、現存が確認されているものについての収集を完了する。 第二に、ローマ法とカノン法を比較する異同文献について各写本および印刷本の分析を行い、可能な限りその成立年代の順序を突き止める。第三に、ローマ法とランゴバルド法を比較する異同文献について印刷本の成立年代を整理する。 第四に、特に特徴的な法制度を選択し、異同文献における記述と中世ローマ法、カノン法およびランゴバルド法それぞれにおける学説史を比較し、両者の関係を調査する。 第五に、中世ローマ法、カノン法およびランゴバルド法に関する先行研究を参照しつつ、異同文献を中世ヨーロッパ法史においていかに位置づけることができるかを分析する。 こうした分析により、異同文献がヨーロッパ法史における複数の法体系の併存において果たした意義を明らかにする。また、国内外の専門誌および学会報告の形で公表する。
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