2023 Fiscal Year Annual Research Report
Rethinking Release from Life Imprisonment - A Comparative Analysis of Release Systems in Japan and England and Wales
Project/Area Number |
22KJ1378
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
戸田 彩織 一橋大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 無期刑 / 終身刑 / 仮釈放 / 社会復帰 / 更生保護 / イギリス法 / ヨーロッパ人権裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究全体を通じては、(1)日本の無期刑受刑者の仮釈放の消極化には、仮釈放許可基準の一つである「社会の感情」の是認が認められにくくなっていることが大きく関係していると考えられること、(2) 刑期が数量的にあらわされておらず、満期釈放の可能性がない無期刑の場合、「社会の感情」の是認の判断が社会情勢や刑罰思想の変化の影響を受けやすいこと、(3) 無期刑と有期刑では仮釈放で問題となる点が異なるため、無期刑の性質に即した仮釈放の制度設計が必要であることを明らかにした。 以上を踏まえて、相互に影響を与え合って発展してきたイギリス法、ヨーロッパ人権裁判所の判例法理、英米における応報刑論を分析した。その結果、(4)外国における無期刑・終身刑受刑者の仮釈放に対する法的規律は、それぞれ①不定期刑としての側面、②終身刑としての側面、③長期刑としての側面に着目するものとして整理することができること、(5)①②③それぞれに意義と限界があること、例えば①の規律は、罪の重さに対応した期間の経過後の拘禁は保安的要請に基づくものであることを意識させることによって仮釈放手続の適正化を導いてきたという意義がある一方で、罪の重さに対応した期間経過前の仮釈放についての統制を内在していないという限界があること、(6) ①②③の規律は相互に排他的なものではなく、イギリスでも①②を組み合わせた制度がとられていること、(7)日本の無期刑も複数の側面をもつ刑罰であると理解でき、それぞれの限界を補う意味でも、仮釈放制度の構想において複数の視点を組み合わせることが有用であることを明らかにした。 以上のうち(2)については、英米諸国で問題となっている仮釈放のポピュリズムと対比して日本の制度の特徴と問題点を示すという形で、2023年度に英語ジャーナルで発表した。残りの点については、博士論文としてまとめて発表する予定である。
|