2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J20641
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
地主 純子 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 決算短信 / 情報開示 / ディスクロージャー / 株価反応 / 株式市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究では、日本において決算短信公表日の市場反応が増加していることを明らかにした。2022年度は2021年度の成果を踏まえて、論文を2本公表した。一つ目の研究は、日本において決算短信公表日の市場反応が増加している理由を、Beaver et al. (2018)を拡張することで探求した。分析の結果、市場反応の大きさに影響を与える企業特性は、企業規模、損失、アナリストカバレッジ、インデックス銘柄であることが明らかになった。また、日本銀行の上場投資信託(ETF)買入以前ではインデックス銘柄であるほど株価反応が大きいという関係は観察されないことが明らかになった。 二つ目の研究は、利益情報に含まれる不確実性に関する情報に注目した研究を行った。具体的には、株価収益率(PER)の低い銘柄を購入し高い銘形を売却するという「バリュー戦略」のパフォーマンスが近年低下していることを背景に、利益情報が持つ不確実性に関する情報を利用することでバリュー戦略のパフォーマンス改善を試みた。Penman and Zhang (2021)の示唆を活用し、益利回り(EP)と自己資本利益率(ROE)を用いる「EP・ROE戦略」を構築することで、従来のバリュー戦略のパフォーマンスを上回る戦略を提示した。 上記のように、2022年度は2021年度の結果を踏まえ、市場反応が増加している理由や、決算短信で公表される利益情報の有用性に踏み込む研究を行った。このような結果は、企業に要求する開示情報の具体的な内容を検討する際に貢献するものと思われる。なお、2022年度実施した2つの研究は『証券アナリストジャーナル』と『會計』へ掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題である「企業の開示情報と資本市場に関する実証分析」をテーマとした研究を2つ公表したため、「おおむね順調に進展している」と評価した。また、2023年度行う研究の準備も進めておりおおむね計画通り実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021、2022年度は、テーマである「企業の開示情報と資本市場に関する実証分析」の内、企業の開示情報である「決算短信」や「利益情報」に注目して研究を進めてきた。今後は、「資本市場」特に「株式市場」に焦点を当てた研究や、「開示情報」の中でも「人」に焦点を当てた研究を進める予定である。
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