2021 Fiscal Year Annual Research Report
子育て、介護、ダブルケアに共通する家族ケアの環境評価尺度の開発への挑戦
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21J23026
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
戸井田 晴美 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 家族 / 子育て / 介護 / ダブルケア / 虐待 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、家族のケアの実態を明らかにすることを念頭において研究をしてきた。まず、研究の土台づくりのために、国内外の先行研究の確認、さまざまな研究方法の知識と技術の習得を目指した。さらに、研究を深めるために必要なこととして、第1に、問うべき問いは何か。第2に、その問いを明らかにするために適した方法は何か。第3に、それらの実証可能性を高めるためにはどうしたらよいか。以上の3点を意識しながら研究を進めてきた。なお、現在はCOVID-19の流行により国内の調査に軸を置いている。 研究の過程では、次から次へと湧き出る疑問をどのように整理するべきか日々模索してきた。例えば、これまでの研究で得ている既存のデータを見直す中で、なぜ大変なケアを自ら引き受けるのか、なぜ良いケアをしたいと望む一方で虐待のような行為へと走ることがあるのかなど、新たな視点から疑問が生まれてきた。そこから、「ケアのアンビバレンス」、「ケアからはじまる虐待」、「ケアの極限値」など、いくつかのキーワードが導き出され、子育て、介護、ダブルケアに共通するであろう人の本質的な面を見つめることの重要性が示された。これは、評価尺度の作成とも重なる側面も有し、全体として研究が進展しているといえる。他方で、見えてきた課題は、これまでは家族のケアの背景にある負担構造や規範意識、社会構造などを中心に捉えようとしてきたが、「家族のケアの本質は何か」、その分析が不足していた点である。それを踏まえて、新規にインタビュー調査を実施した結果、家族のケアと虐待が近い位置関係にあることが示され、そこにある複雑性が浮き彫りになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、日本家族社会学会などにおいて、研究成果の報告を行うことができた。さらに、理論と実践の統合を意識し、学会発表に留まらず、ケアに関わる実践の現場で働く方々に向けて、発表の機会を3回得ることができた。このことは、幅広い立場の方々からフィードバックを得ることにつながり、研究を推進するうえでも大変有益であったといえる。また、2020年度に執筆した論文は、公益社団法人程ヶ谷基金より「2021年度 第12回 男女共同参画・少子化に関する顕彰事業 論文部門 奨励賞」をいただいた。2021年度の投稿論文はまだないものの、その下準備が整っている段階にあり、一定の進歩が認められると考える。本研究に必要な調査についても、予定していたインタビュー調査を実施することができた。 以上をもって、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、問いを深めること、研究方法の再検討と修正をすること、既存と新規のデータを組み合わせ、精緻な分析を進めることとする。これらと同時に、後半は博士論文の構成を検討し、全体の枠組みを捉えたうえでの作業に入る。本研究の課題については、家族のケアの本質をいかにして捉え、それは何をもって本質であると見なすのか、という点にある。この課題が克服できるのか、それとも限界点となるのかは、現段階では判断できない。しかしながら、この視点をもって研究を進展させ、論文へと結実させる。これらの研究と並行して、研究成果は、2021年度と同様に、理論と実践の統合を意識し、学会発表、論文投稿に留まらず、ケアに関わる実践の現場で働く方々に向けても発信を続けていく。
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