2022 Fiscal Year Annual Research Report
インドにおける酪農産業の発展と家畜飼育・搾乳労働に関するジェンダー分析
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21J01570
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 雪子 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | インド / 女性労働 / ジェンダー / 酪農産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き先行研究のレビューと理論的検討を行い分析枠組み構築を行うとともに、インドにおける現地調査を実施した。 まず、前年度から継続しているインドにおける「女性労働」に関する文献サーベイと先行研究のレビューでは、特に、近年出版された農村女性の家畜飼育・搾乳労働とパンデミック下の女性労働に関する文献を取り上げた。前者からは、女性たちが従事する小農世帯の家畜飼育・搾乳労働の複雑性を改めて確認し、その把握のための方法の検討の重要性を再認識した。後者では、主にフェミニスト・ポリティカルエコノミー論の視角からの議論をサーベイした。パンデミック下において悪化した「女性労働」をめぐる諸問題の実態把握のために、社会的再生産やインターセクショナリティの視角の重要性について学び、一部、国際学会において報告した。さらに、近年再注目されている家父長制とここ数年日本においても議論が盛んなインターセクショナリティ論に関して、特にフェミニスト経済学における理論化の歴史と動向を捕捉するため、関連の書籍を精読する研究会(6回)を開催・報告した。また、前年度から取り組んでいる「エンパワーメント」と「エイジェンシー」概念をめぐる議論に関して文章をまとめた(2023年度出版予定)。加えて、国際開発体制をフェミニスト・ポリティカルエコノミー論の視点から検討する作業にも従事した。 約1か月間実施した現地調査では、長年の調査地であるラージャスターン州の女性酪農協同組合に加え、他4州の酪農協同組合関連組織とミルク生産地域を訪問し、比較地域の検討のための情報収集を行った。また、全インドの多様な農業生態的地域の農村を対象とした世帯調査のプロジェクトについてレクチャーをうける機会があり、本研究の現地調査で実施予定である世帯調査の具体的な方法について考察を深めることができた。加えて、有用な文献情報も得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、テーマに関連して新たに「家父長制」や「インターセクショナリティ」の理論研究に従事した。インドの女性労働に関する文献を主とした文献サーベイと先行研究レビューについてさらに進めたが論文執筆には至らなかった。特にパンデミックに関連した内容については、国際学会において一部報告した。前年度取り組んだ「エンパワーメント」と「エイジェンシー」の概念の研究について、一部を文章にまとめた。また、新型コロナウィルス感染症によるパンデミックがおさまってきたため、インドでのフィールドワークを実施し、比較研究をするための対象地域の情報収集を行うことができた。また、課題と考えていた現地調査の方法について有効な示唆を得た。当初の計画では本調査を実施する予定だったため、該当の進捗状況とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、本年度は主に現地調査を実施する予定であったが、前年度に現地調査が実施できなかったことと新たな理論研究と必要な文献レビューの対象の追加があったため、計画の変更が必要である。 今後は、引き続き分析枠組みの精緻化に取り組むとともに、本年度の現地調査で得た知見に基づきさらなる現地調査を実施する予定である。それに際しては、本年度の現地調査情報を得た文献やで築いた研究者のネットワークを通じて、具体的な調査方法を検討する予定である。また、継続している「女性労働」に関する文献サーベイ・先行研究のレビューについて投稿論文にまとめる予定である。その内容を踏まえて、インドの酪農産業の発展における女性による家畜飼育・搾乳労働を再定位することを目的とした報告を国内の研究会や国際学会等で実施予定である。さらに、本研究に関連して本年度取り組んだ「家父長制」に関連する文献の精読の成果と、国際開発体制をフェミニスト・ポリティカルエコノミー論の視点からとらえなおす研究について、文章化する予定である。
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