2022 Fiscal Year Annual Research Report
イオン輸送理論と分子設計論のクロスオーバーによるシングルイオン伝導電解液の創製
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22J11851
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
重信 圭佑 横浜国立大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 電気化学 / リチウム系二次電池 / 液体電解質 / イオン輸送 / 濃厚電解液理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン輸送の詳細を明瞭及び平易にする目的から、イオンのみからなる物質である溶融塩とリチウムイオン液体に着目し、リチウムイオン輸率を始めとした輸送特性の評価を行った。溶融塩 lihtium (fluorosulfonyl)(trifluorosulfonyl)amide やオリゴエーテルカルボキシレート系リチウムイオン液体 lithium 2,5,8,11-tetraoxatridecan-13-oateではリチウムイオン輸率(アニオンブロッキング条件下)が1となり、濃度分極が生じずリチウムイオンのみが輸送する事を確認した。しかしながら、4価のホウ酸エステルをアニオンとするホウ酸エステル系リチウムイオン液体 Li[B(mPEG3)2(OHFIP)2]及びLi[B(mPEG3)2(OTFA)2]では、0.25、0.77であり濃度分極が生じてしまう事を確認した。温度可変NMR及びFAB-MS測定により、ホウ酸エステルアニオン中のB-O結合で側鎖交換が生じている事に加え、リチウムイオン液体中で3価のホウ酸エステル(溶媒)とリチウム塩が生じる事を確認し、ホウ酸エステル系リチウムイオン液体は溶媒とリチウム塩が生じる平衡反応を有する事が明らかとなった。従って、イオンのみからなる溶融塩及びリチウムイオン液体系において、溶媒とリチウム塩が生じる平衡反応を有する場合、濃度分極が生じ輸率が1とならない事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、液体電解質中でのイオン輸送メカニズムの詳細理解と溶液構造との関連性調査に重点を置いた。高濃度リチウム塩溶液に関する分子動力学(MD)シミュレーションを実行する前に、イオン輸送の詳細を明瞭及び平易にする必要があると考え、本年は溶融塩及びリチウムイオン液体に関する輸送特性の評価を行った。事実、溶媒の存在による輸送特性の違いを見出すに至った。 上記に加え、Onsagerの輸送係数を用いた高濃度リチウム塩溶液のこれまでの検討から、溶媒を含む系でリチウムイオン輸率を1にするには、リチウムイオンーアニオン間、リチウムイオンー溶媒間の運動相関を無相関にする必要がある事を見出しており、実際、sulfolaneや弱配位性溶媒であるfluoroethylene carbonateを溶媒に用いた液体電解質系において同様の挙動を示す事を確認した。MDシミュレーションから、これらに関する溶液構造及び溶媒の配位時間を見積もり、リチウムイオンの伝導パスが溶液中で形成されている事に加え、配位時間が短い事が高リチウムイオン輸率に繋がっているとの知見を得た。 以上、液体電解質におけるイオン輸送の詳細を明らかにし、且つ溶液構造との関連性を見出せたという点から、着実に研究が進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえ、液体電解質のイオン輸送において、NMRでの拡散やイオン伝導よりもタイムスケールが短く、よりミクロな溶媒・アニオンのリチウムイオンへの配位状態が重要であると予想され、実験的に得られるドナーナンバーに着目をし、配位性の異なる溶媒・アニオンを用いた各系を比較する必要があり、溶液構造の可視化、溶媒・アニオンの配位時間の算出は現在進行中である。 また、溶媒及びアニオンの配位時間はリチウムイオンに対する溶媒和自由エネルギーの活性化障壁に関連していると予想される事から、自由エネルギー計算を実行し、同一液体電解質中での溶媒・アニオンのエネルギー障壁の違いを確認することに加え、電解質系毎の違いを明らかにし、輸送特性との関連性を理解する。 以上を踏まえ、実際に液体電解質の創製を行い、イオン輸送特性評価を実行し所望の物性が得られているかを確認する。加えて、実際に電池のセル作成を行い二次電池の電解質としての評価も行う。
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Research Products
(6 results)