2022 Fiscal Year Annual Research Report
干渉・拡散効果を評価するためのパーコレーションと統計的因果推論の融合技術の開発
Project/Area Number |
22J21584
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
田口 千恵 横浜国立大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 統計的因果推論 / パーコレーション理論 / 個体間干渉データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,個体同士が干渉しあうデータを解析対象とし,統計的因果推論とパーコレーション理論及びネットワーク理論を融合させた理論を構築することで,応用の示唆に富んだ干渉・拡散効果の推測法の開発を目的とする研究である.上記の研究目的を達成するために設定した2点の研究中心課題(下記(a),(b))について項目を分けて,令和4年度研究実施状況を報告する. (a) 未観測交絡因子の存在可能性という観点から「個体間の非干渉性」の仮定の合理性を検討し,この仮定が因果効果の推定に与える影響を明らかにする. (b) パーコレーション理論・ネットワーク理論と統計的因果推論に基づく干渉・拡散効果の識別可能条件を明らかにしたうえでの,統計的推測法の提案. 課題(a)について,個体同士の干渉は単純な場合,未観測交絡因子変数,または誤測定中間変数の振る舞いとして説明することができる.そのため,未観測交絡因子や誤測定中間変数が存在する場合,因果効果の推定に対してどのような影響を与えるのかについて検討を行った.この結果,個体同士の干渉が未観測交絡因子変数等に捉えられる場合,定量的な因果効果の導出にはバイアスが生じてしまうが,定性的な因果効果(因果効果の真値と正負が一致する)を考えると識別可能条件が導出できることを確認した. 課題(b)について,パーコレーション理論・ネットワーク理論と統計的因果推論に基づく干渉・拡散効果の識別可能条件を明らかにするための第一段階としてパーコレーション理論の最も簡易的な形状であるベーテ格子(木構造)を干渉構造として仮定した検討を行った.その結果ベーテ格子を干渉構造として仮定した検討において干渉・拡散効果の統計的推定が可能であることを確認した.現在,より現実世界での個体同士に近い干渉構造を仮定したもとでの干渉・拡散効果の識別可能条件の導出,統計的推測法の提案に向けた検討を行っている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画と現在の進歩状況を照らし合わせ,本研究の進歩状況はやや遅れていると判断している.その主な現状は,以下の2点からなる. (1)研究結果の論文化の遅延,発表の未実施 (2)在外研究の未実施 まず一点目は,研究実績の概要で述べた研究結果についてまとめ,論文化する過程が当初の予定よりも遅れてしまっている.積極的に国際会議などに参加したいと考えていたが実現が令和4年度は出来なかった.これらの研究進捗状況が計画よりも遅延している主な理由として,研究結果のまとめと推敲に想定以上の時間がかかっていることが挙げられる. 次に二点目として,予定していた在外研究が実施できなかった点である.香港浸会大学において在外研究を実施し,Jiji Zhang教授との共同研究として因果ネットワーク構造探索問題に取り組むことを研究計画に記載していたが,今年度実施することが出来なかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,研究課題(a)と研究課題(b)について分けて説明する. 研究課題(a)については,論文の推敲を直ちにすすめ,学術論文としてまとめ,統計科学学術誌に投稿し,掲載されることを目指す. また,研究課題(b)においても,り現実世界での個体同士に近い干渉構造を仮定したもとでの干渉・拡散効果の識別可能条件の導出,統計的推測法の提案に向けた検討をまとめ,統計科学学術誌に投稿を目指す.
|