2022 Fiscal Year Annual Research Report
マルチフィデリティ解析による多体力学系の構造理解と宇宙機の軌道設計への応用
Project/Area Number |
22J22033
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
伊藤 大智 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 軌道設計 / ミッション設計 / スイングバイ / 宇宙機 / 軌道力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
深宇宙探査機のミッション設計では,複数回天体の近傍を通過すること(多重スイングバイ)により,不足するエネルギーの獲得・目標軌道への位相調整が可能となり,探査の低コスト化・高頻度化に繋がる.この多重スイングバイを行う上では宇宙機とスイングバイ天体の会合が大きな問題となる. 本年度の前半には採用前から進めてきた,多重地球スイングバイを用いた地球周回軌道(GTO)から火星への遷移機会の拡大に関して取り組んだ.本研究では短期間で地球と再会合してスイングバイを行うことを目的に,初期軌道から遷移可能な軌道群領域と,地球出発から0.5または1年後に再び地球と位相が合うような共鳴軌道群のマッチング手法を提案した.この結果を用いることで,地球と火星との位置関係および地球出発時の速度ベクトル方向が調整可能となり,近年増加している大型ロケットでの相乗り打上枠の有効利用に寄与する. 後半には,三体問題下で地球周りを周回する宇宙機に対して月が与える影響について解析を行った.一般的なスイングバイ軌道設計では月の影響が地球からの影響に比べて強く及ぶ範囲(影響圏)に着目して検討を行うが,実際には影響圏外でも月重力によって軌道要素が変化する.この課題を解決し,遠方天体の重力を効果的に利用するため,二体問題よりも高いフィデリティでの詳細なダイナミクスの理解が必要である.そこで,本研究では平面円制限三体問題を起点として地球周回長楕円軌道群が遠方の月によって受ける影響把握に取り組んだ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用前から進めていた研究項目の論文投稿作業で想定以上に査読対応等に時間を費やしたため,1年目の前半まで作業が伸びてしまったが,柔軟に研究計画を立て直して研究を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,遠方の天体によるスイングバイ(Distant Lunar Flyby, DLF)を用いた軌道遷移手法の確立を目指す. 具体的な推進方策として,これまで進めてきた「様々な初期条件に対して"1周中"に受ける遠方天体フライバイの影響把握」について,ヤコビ定数や位相との関連性の議論を更に深め,DLFを強く受ける条件やDLFが軌道要素変化に寄与しない条件把握を行う. 次に,「"連続的に"遠方天体フライバイを利用した軌道設計手法の検討」を進める.本研究は1年目と同様に,宇宙機が衛星軌道面内に投入されていることを前提とし,平面円制限三体問題下で実施する.まず,1周回毎に受ける遠方天体フライバイの影響について先に把握した条件を活かしてモデル化する.そして,1周後に望ましい位置関係をとるための軌道選択方法の検討,およびマヌーバ回数・航行時間・燃料消費量の多目的最適化の順で進める.
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