2023 Fiscal Year Research-status Report
マルチフィデリティ解析による多体力学系の構造理解と宇宙機の軌道設計への応用
Project/Area Number |
22KJ1438
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
伊藤 大智 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 軌道設計 / ミッション設計 / スイングバイ / 宇宙機 / 軌道力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
深宇宙探査機のミッション設計では,複数回天体の近傍を通過すること(多重スイングバイ)により,不足するエネルギーの獲得・目標軌道への位相調整が可能となり,探査の低コスト化・高頻度化に繋がる.一般的なスイングバイ軌道設計では衛星の影響が惑星からの影響に比べて強く及ぶ範囲(影響圏)に着目して検討を行うが,実際には影響圏外でも運動が変化している.本研究では影響圏外で及ぶ衛星重力の影響を効果的に利用するために高いフィデリティでの詳細なダイナミクスの把握を進めている.具体的には,昨年度後半に引き続いて平面円制限三体問題下で地球周りを周回する宇宙機に対して月が与える影響についての解析を進めた. 今年度は昨年度の解析に対して,初期値の与え方やダイナミクスの変化として指標にする要素を工夫して衛星重力の影響評価を実施した.この結果,遠方天体スイングバイの効果の分類が可能となった.分類結果を用いる事によって所望の状態へ遷移させる操作が可能になることが期待出来る.また,影響圏外で生じる遠方天体スイングバイと影響圏内スイングバイは全く別の現象ではなく,連続した現象である.今年度後半には影響圏内外の運動変化について議論し,衛星重力利用の拡張性を高めた. 近点から次の近点までに受ける重力摂動の効果を把握する単周回解析に加えて,複数周回解析も実施した.先行研究で提案された近似手法との比較を通して,軌道変更マヌーバのタイミングや大きさの差異が引き起こす,摂動効果や位相の微小な変化の影響について議論を深めた.以上の内容について今年度は国際学会での口頭発表を実施し,現在は論文執筆を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に修正した研究計画に従って予定通り進展しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,遠方の天体によるスイングバイの効果を連続的に用いた軌道遷移手法の確立,その検証を行う. 昨年度に挙げた推進方策のうち,「単周回解析におけるヤコビ定数や位相との関連性の議論」および「複数周回解析における1周後に望ましい位置関係をとるための軌道選択方法の検討」までは完了済みである. 来年度前半も引き続き手法確立に向けた解析を進める.これまでに分類した遠方天体スイングバイの効果を組み合わせて所望の軌道への到達を目指す.また,遠方天体スイングバイ効果のモデル化を行い,実ミッションの初期検討での利用に向けてフィデリティと計算コストの調整・検証を行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症への罹患に伴い,参加予定の学会への出席を見送ったため. 次年度は国外で開催される国際学会への出張2件(75th IAC, 35th AAS/AIAA Space Flight Mechanics Meeting)を予定しているため,その旅費として使用予定.
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