2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J00973
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高橋 寿光 金沢大学, 新学術創成研究機構, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2027-03-31
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Keywords | 古代エジプト / 新王国時代 / 土器 / 編年 / 製作技術 / 交易 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では古代エジプト新王国時代(紀元前1570年頃から1070年頃)の「アンフォラ」と呼ばれる土器の交易網を復元し、当時の経済状況の実態を明らかにすることを目的としている。新王国時代の経済についてはまだ研究の余地が残されており、本研究の意義は大きいと考える。 今年度は本研究の基礎資料を取得することに研究の主眼を置いた。そのため特に良好な資料が揃うダハシュール北遺跡において2022年7月から8月、2023年2月から3月の2回のエジプト現地調査を行なった。エジプト現地調査では主に考古学的調査を行なった。考古学的調査ではアンフォラの実測、写真撮影、3次元記録を行った。こうした記録の過程において編年や産地の指標となる胎土、器形、サイズ、表面調整、マークの位置、成形方法などの細かな観察を行い、詳細なデータを取得した。 帰国後に現地調査で得られた資料を整理し、図版、レポートの作成を行うとともに、これらの資料をもとに本研究の基礎となるアンフォラの編年の研究を実施した。これらの調査研究によりこれまで不明な点が残されていたアンフォラ編年をより詳細にすることができ、研究の基礎を築くことができた。特にこれまでひとまとめにされていた時期を区分することができたのは大きな成果であると考えている。なお、成果の一部は学会において口頭発表を行ない、また現在、編年に関する論文を準備中で、来年度、海外の土器専門誌に投稿予定である。その他、国内ではこれまでに出版されたエジプト全土の他遺跡のアンフォラの集成を行い、今後の産地の研究の基礎資料を揃えることができた。 今後は再構築した編年に沿って取得した資料を並べ、遺跡間の比較を行い、交易網の復元を行なっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の2回の調査によってダハシュール北遺跡におけるアンフォラの全体像を掴むことができた。またこれまで報告されたアンフォラの集成により、エジプト全土のアンフォラの状況の全体像を把握することができた。資料の取得に加えて、詳細なアンフォラの編年を構築し、研究の基礎を築くことができた点も大きな成果である。なお、今年度は計画していたエジプト現地における理化学分析が実施できなかったが、来年度以降、エジプト現地、欧米の博物館における分析を計画しているため、大きな遅れではないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き資料の取得を目的としてエジプト現地調査を行うとともに、欧米の博物館に所蔵されている一次資料の調査を行う計画である。同様に報告された資料の集成も継続していく。これらの資料について、現地調査で明らかとなった特徴をもとに産地推定を行う。これによりエジプト全土における産地に関するデータを取得する。これらのデータを申請者が再構築した編年に沿って整理し、遺跡間の比較を行い、交易網を復元していく計画である。 なお、資料集成に際しては申請者が派遣されるオーストリア科学アカデミーのDavid Aston博士、Bettina Bader博士から様々な遺跡のアンフォラに関する情報の提供を受けることで、研究の蓋然性を高めていく。資料の提供とともに、資料を調査した知識や経験から有益な助言を受けることで、研究の精度が高まることが期待される。
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