2022 Fiscal Year Annual Research Report
収穫後青果物の細胞壁メタボロームと多糖分子ネットワークの関係解明
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22J23728
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大島 達也 岐阜大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞壁 / メタボロミクス / ナノ構造 / 青果物 / 貯蔵生理 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は収穫後青果物の貯蔵中における細胞壁成分の変化を把握し,青果物の硬度に寄与すると考えられる細胞壁多糖のネットワーク構造との関係を明らかにすることを目的とする。初年度は,細胞壁メタボロームの解析手法の検討,電気インピーダンスを利用した細胞膜の評価法の検討,および細胞壁多糖のナノインデンテーション測定に取り組んだ。細胞壁メタボローム解析手法の検討では,GC-MS/MSを用いた方法を試みた。ニンジンおよびブロッコリーにおいて測定を行ったところ,ガラクツロン酸やラムノースなど細胞壁由来の遊離糖が検出され,細胞壁の代謝変化の確認が可能であると考えられた。今後は,青果物から抽出した細胞壁物質を用いて測定を行い,直接的に細胞壁メタボローム解析が可能かを検討する。また,細胞内の酵素やイオンの流出が細胞壁メタボロームに影響をあたえるため,細胞膜の状態の評価法を検討した。蒸留水およびスクロース溶液を真空含浸させたリンゴ試料のインピーダンスおよび細胞サイズを測定したところ,蒸留水含浸試料では細胞が膨張し,細胞膜容量が上昇するという結果がみられた。これは細胞膜の伸張によるものであり,細胞膜容量により細胞膜の状態を評価できる可能性が示唆された。細胞壁多糖のナノインデンテーション測定は,細胞壁多糖のネットワーク構造のテクスチャへの影響を調査するために行った。測定は原子間力顕微鏡により行い,試料には加熱したニンジンから抽出した細胞壁多糖を用いた。加熱ニンジンのAISは未加熱ニンジンのものより柔らかくなる傾向がみられ,加熱に伴う細胞壁多糖のネットワーク構造の変化がインデンテーションに影響を与える可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は細胞壁メタボローム解析を行うにあたりどのような手法を用いるか,という点に焦点を当てた。これについては,検討の余地はあるものの現時点で分析可能な手法が判明し,次の段階である貯蔵試験に移ることができる。加えて,インピーダンスによる細胞膜評価法および原子間力顕微鏡によるナノインデンテーション測定の知見も得ることができた。細胞膜の状態を把握することは青果物貯蔵時の細胞壁の変化のメカニズム解明に大いに役立つと考えられる。一方で,細胞壁多糖の力学的特性の把握は,細胞壁の変化に伴う青果物の軟化現象の解明につながる。以上のように,細胞壁メタボローム解析の知見に加え,細胞壁メタボロームに関連する変化を把握する方法の知見も得られており,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点において,GC-MS/MSを用いた分析により細胞壁のメタボローム解析が可能であることが明らかになった。そこで実際に青果物の貯蔵試験を行い,細胞壁の代謝変化を確認する。供試青果物はトマトを予定しており,4℃および10℃で貯蔵し,貯蔵温度による細胞壁メタボロームの違いを比較する。特に細胞壁は多くの糖により構成されているため,細胞壁物質の加水分解物を測定試料に用い,構成糖の同定を行う。また,細胞壁物質からペクチン,セルロース,ヘミセルロースをそれぞれ抽出し,全糖量をフェノール硫酸法により求める。ペクチンにおいてはネットワーク形成に関与するメトキシル化度の測定も行う。各細胞壁抽出物については原子間力顕微鏡によりナノストラクチャの観察も行い,細胞壁メタボローム変化と合わせ,それらの関連性を調査していく。細胞壁メタボローム解析手法については,高速液体クロマトグラフィやFT-IRを用いた測定も行い,引き続き知見を深める予定である。
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