2022 Fiscal Year Annual Research Report
時空から学ぶ現代物理学の「抽象的領域・存在者」の実在性
Project/Area Number |
21J01573
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤田 翔 名古屋大学, 情報学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 実在 / 同一性 / 対称性 / 抽象性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年に引き続き、科学理論に登場する抽象的な存在者の在り方を哲学的に分析した。今年度では特に同一性という概念に着目し、哲学が「ある存在Aと存在Bを同一だ」と考える場合の根拠や方法を整理して、それを現代物理学理論に適用させるとどのような見解が得られるかという考察を行った。さらに、本研究テーマである「抽象性」を、申請者がこれまで研究を重ねてきた時空概念と再び結び付け、時空を記述するには日常的な時空観以上に、それらを基礎付けている数学的な土台こそが重要であり、それが物理的な意味での時空の根幹を成していることを示唆した。 対象の同一性という概念は、物理学理論においては対称性と大いに関係していることを主張し、国内学会で発表した。さらに指導教員にアドバイスを頂きながら、同一者の具体例として、「時空点」と「粒子」に関してそれらの特徴を整理し、両者の違いを明確にまとめた上で国際論文に投稿した。また夏には哲学、物理学、数学の多角的な観点から時空の存在をテーマとしたブルガリアでの国際会議に参加し、時空概念の抽象性の重要性を発表し、年度末に論文集として出版した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響でずっと延期されていた国際会議がようやく開催され、国際的な規模での専門家と交流することができたのが大きい。 なおかつ、2022年度は「物理的領域から得られる哲学的世界像」をテーマに、民間財団からも助成金を受けており、出身研究室でのワークショップ等を通じて哲学で語られる「実在」の意味を掘り下げることができたことも順調な進捗の一因である。
|
Strategy for Future Research Activity |
時空概念は、あくまで物理的領域の一例に過ぎず、「現代物理学はより広義な意味での物理領域を含意している」という本研究の最終的な主張に向けて、時空がより基礎的な存在者から創発したというこれまでの哲学的な主張を整理し、実在や抽象性に関してこれまでアウトプットしてきた内容と関連付ける。
|