2022 Fiscal Year Annual Research Report
An Epigraphical Approach to the Atthidographic Places and Memories
Project/Area Number |
21J01729
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 一博 名古屋大学, 人文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | アッティカ史叙述 / ローカルヒストリー / 碑文学 / 碑文習慣 / ポリス / アテナイ / 場と記憶 / 古代ギリシア |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本年度は、Covid-19対策の規制緩和を受けて、2023年3月に海外渡航を実施した。アテネ碑文博物館における碑文(SEG XXI 469)の実見調査を中心に、在アテネ・フランス考古学研究所図書館における資料収集も行った。本碑文については、ギリシア碑文学協会およびアテネ考古学協会の研究者たちと意見交換を行い、碑文の出土年代・出土場所に関する新たな情報を得ることができた。アテネ市内におけるフィールドワークについては、滞在時に発生したストライキと大規模な抗議デモのために中止せざるを得なかった。 2.本年度も引き続き、アッティカ史叙述断片のコンテクスト分析を進め、必要な研究書籍の購入に努めた。 3.昨年度、国際学会において口頭発表したトリコス供犠暦の誓いの文言をめぐる論文は7月にArchaeopressから論文集の一部として刊行され、マラトンにおけるディオニュソス祭祀の文化的記憶をめぐる論文は共著者に提出済みであり、国際的な学術誌に投稿する準備に入っている。さらに、アッティカ史叙述の主たる「場」をなすアクロポリス出土碑文を含む、アッティカ碑文から見たセメレー祭祀の場について考察した論文が、来年度中にKapon Editionsから論文集の一部として刊行される予定である。また、ローマ期アッティカのケフィシアに建立されたディオニュソスの祭壇(IG II/III3 4, 982)と17世紀はじめにミシェル・フルモンがスケッチしたディオニュソスの奉納台座の同定を試みた論文が、12月に国際的な碑文学・パピルス学雑誌に掲載された。 4.2023年3月末に古代ギリシアの歴史叙述に関するオンラインワークショップを組織し、ローカルヒストリーに関する研究動向と論点、アッティカ史叙述の特徴について口頭発表した。その内容は加筆・修正のうえ国内の学術誌に寄稿し、来年度中に刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.本年度は、Covid-19対策の規制緩和を受けて、当初予定していた海外出張の一部を実施することができた。しかしながら、日程などの制約により、碑文の実見調査や研究所図書館における文献調査、およびフィールドワークを十分遂行することはできなかった。 2.その一方で、ギリシア碑文学協会、アテネ考古学協会、在アテネ・ドイツ考古学研究所の研究者たちと対面で意見交換を行い、新たな展開や共同研究の実施について前向きな話し合いができた。 3.なお、国内での文献収集や史料調査は概ね順調に進んでおり、アッティドグラフィ(アッティカ史叙述)断片のコンテクスト分析と碑文史料との関係性を中心に、研究成果を一つずつ論文としてまとめることに注力している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.最終年度となる今年度は、可能なかぎり2023年夏(9月頃)と2024年春(3月頃)の2回、アテネ市内において現地調査を行う。在アテネ・ドイツ考古学研究所(DAI)を拠点とし、碑文博物館、アゴラ博物館、ピレアス考古学博物館に所蔵されている碑文の実見調査を中心に行う。その際、ドイツおよびフランス考古学研究所の図書館も利用し、関連文献を収集する。 2.また、必要に応じて、欧米各地の大学や研究機関が所有する碑文拓本の調査・写真収集を行い、碑文研究を補完する。 3.その間に、アッティカ史叙述における記憶と場に関する研究成果を、1)聖域(建築物、神殿、彫像、奉納物、祭壇)、2)墓・英雄廟、3)土地・自然地形、4)地域共同体デーモスを軸に、論文としてまとめていく。 4.なお、2023年3月の碑文博物館における調査の成果は、4月28-29日にアテネで行われる予定のアッティカ碑文およびトポグラフィに関する国際シンポジウムにおいて、オンライン参加・口頭発表する。また、11月には西洋史研究会の大会において、本研究の成果を積極的に発表する。現段階では、アッティカ史叙述に埋め込まれた碑文に着目し、歴史叙述と碑文史料の関係についてケーススタディを行う予定である。さらに、2024年3月にアテネで行われる予定の日欧古代地中海世界コロキアムに参加し、2023年夏の碑文調査の成果を中心に本研究の一端として口頭発表する予定である。
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[Book] Our beloved Polites: Studies presented to P. J. Rhodes2022
Author(s)
Delfim Leao, Daniela Ferreira, Nuno Simoes Rodrigues, Rui Morais, John Davies, Robert W. Wallace, Brenda Griffith-Williams, Aikaterini-Iliana Rassia, Michael Gagarin, Gerhard Thur, Roger Brock, Lynette Mitchell, Ian Worthington, Robin Osborne, Andrea Giannotti, Kazuhiro Takeuchi, Adele C. Scafuro, et al.
Total Pages
373
Publisher
Archaeopress
ISBN
9781803271705