2022 Fiscal Year Annual Research Report
近代東アジアにおけるセクシュアリティ言説と女性同性愛:日本と中国の比較を中心に
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21J21295
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
趙 書心 名古屋大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ジェンダー / セクシュアリティ / クィア・スタディーズ / レズビアン |
Outline of Annual Research Achievements |
該当年度は、同性愛というカテゴリーの複層性を明らかにし、近代女性同性愛の言説史を通時的に再構築するという当初の研究計画に沿い、個別作家を軸としたミクロ的な研究と歴史背景に関するマクロ的な研究を同時に行い、A)研究成果の論文化と、B)日本国内での資料調査という2つの作業に取り込んだ。研究実施の状況は以下の通りである。 A)としては、昨年度以来続いていた女性作家を対象とする事例研究の成果を論文化し、口頭発表を1件、著書(分担執筆)1件の発表を行った。口頭発表「吉屋信子「或る愚かしき者の話」論:掲載誌『黒薔薇』との関わりから」(日本文学協会・新フェミニズム批評の会7月例会、2022.7)において、吉屋信子が創刊した個人雑誌『黒薔薇』を分析対象とし、同誌に連載されているの同性愛小説の受容状況を考察し、レズビアン作家の語りにくさと少女読者との亀裂を明らかにした。また、著書(分担執筆)「カーペンター『中性論』翻訳と『番紅花』同人との交流」(『未来からきたフェミニスト:北村兼子と山川菊栄』花束書房、2023)において、山川菊栄が同性愛文献「中性論」を翻訳した歴史的経緯を考察し、菊栄の女性同性愛問題への関心と翻訳の同時代的意義を明らかにした。 B)としては、昨年度に引き続き、吉屋信子など女性作家に関する資料調査を進め、とくに戦時期の作品について集中的に調査を行った。また、女性作家伊澤みゆきを新たに事例研究の対象に加え、発表作品のリスト化と所在調査に取り込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は日本国内での文献調査を行うことで十分な研究成果を獲得し、複数回にわたる成果発表の機会を得ることができた。女性作家を研究対象とする1件の口頭報告と1件の著書(分担執筆)を発表し、女性作家を対象とする事例研究という研究計画の一部を完成した。一方、それと並行して、調査期間を戦時期へ進めたとともに、伊澤みゆきなどを対象とする事例研究を新規に開始し、関連資料の調査と収集を行った。以上のように、本年度は研究成果の発表を達成し、集中的な文献調査により新規研究を推進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は引き続き、女性作家を対象とする事例研究と、戦時期を対象とする言説研究を進める。事例研究として、吉屋信子などの女性作家の作品を考察し、研究成果を論文化する。また、言説研究として、1930年代後半から1945までの期間を研究範囲とし、女性同性愛に関する文献資料を収集することで、研究史上の空白を補う。
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