2023 Fiscal Year Annual Research Report
近代東アジアにおけるセクシュアリティ言説と女性同性愛:日本と中国の比較を中心に
Project/Area Number |
22KJ1522
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
趙 書心 名古屋大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 女性同性愛 / レズビアン / クィア / 女同士の絆 / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初の研究計画に沿い、近代女性同性愛の言説史を通時的かつ複層的に再構築するために、歴史背景に関するマクロ的な調査と、個別作家を軸としたミクロ的な研究とを同時に行った。具体的には、A)歴史的資料の調査・収集、B)個別の文学作品の考察という2つの作業に取り込んだ。研究実施の状況は以下の通りである。 A)では、昨年度に引き続き、近代の女性同性愛に関する歴史的資料の調査を進め、とくに研究蓄積の薄かった1930年代から戦時期までの期間について、集中的に調査を行った。大衆雑誌、娯楽雑誌などから女性同性愛に関する情報を収集・分析し、この時期における女性同性愛言説の分布と特徴を明らかにした。 B)では、作家吉屋信子の女性同性愛関連の作品「或る愚かしき者の話」(1925)、「蝶」(1937)を対象として、女性によって書かれた同性愛的表現について考察し、研究結果を論文化した。「或る愚かしき者の話」については、同誌に連載されているの同性愛小説の受容状況を分析し、レズビアン作家の語りにくさと少女読者との亀裂を明らかにし、EAJS 2023 Conferenceにおいて報告した(”The unheard voice: an analysis of Yoshiya Nobuko’s Aru orokashiki mono no hanashi”)。また、「蝶」については、同時代の同性愛言説との相関関係で考察した。「蝶」はエログロナンセンス時代に流通した、「男装の麗人」という女性同性愛表象を具現化した作品であることを明らかにし、現在、論文化中である。 本研究の研究期間全体を通して、近代日本における女性同性愛の言説の変容に着目し、歴史背景に関するマクロ的な調査と文学作品を中心としてミクロ的な分析という二つの方向から、女性同性愛というカテゴリーの複層性を明らかにした。
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