2023 Fiscal Year Annual Research Report
Gdf11の発現制御機構の違いに基づく後肢の位置の多様性を生み出す分子機構の解明
Project/Area Number |
22KJ1531
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 成治 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | エンハンサー / 形態形成 / 進化発生生物学 / ボディプラン |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちヒトを含む四肢動物の後肢は骨盤を介して椎骨の一種である仙椎に接続する。この仙椎-後肢ユニットは体の前後軸に沿って種に固有の位置に形成される。仙椎-後肢ユニットの形成位置の種間の違いは Gdf11遺伝子の発現開始タイミングの違いによって決まることが示唆されている。そこで、仙椎-後肢ユニットの位置が異なる四肢動物種を用いて、Gdf11の発現制御メカニズムを比較することで、後肢の位置の多様性を生み出した分子メカニズムの解明を目指した。まず本研究では、種間で共通のメカニズムに着目した。 遺伝子の発現は、エンハンサーと呼ばれるDNA配列によって時空間的に制御されている。本研究では、これまで種間で保存されたGdf11のエンハンサーとして、HCR領域を同定した。HCR領域をノックアウトしたマウスを作製し、表現型を観察した結果、HCR領域ノックアウトマウスは、内在性のGdf11の発現量が低下し、仙椎-後肢ユニットの位置が椎骨二つ分後方へシフトした。このことから、HCR領域はGdf11のエンハンサーであることが明らかとなった。次に、HCR領域内のDNA配列を参考に、Gdf11の上流因子の探索を行った。候補の一つであるFGFシグナルを阻害すると、Gdf11の発現量が減少したことから、FGFシグナルはGdf11を負に制御していることが示唆された。本年度はこの成果を論文としてまとめ、Frontiers in Cell and Developmental Biology投稿し、掲載された。本研究の成果を踏まえ、今後、Gdf11の発現開始タイミングを制御する分子メカニズムの全容を解明することができれば、脊椎動物における後肢の位置の多様性と種による骨格パターンの違いを生み出したメカニズムの全容解明が大きく進展することが期待される。
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