2023 Fiscal Year Annual Research Report
インターカレーション法を利用したグラフェン/SiC界面での二次元超伝導体の作製
Project/Area Number |
22KJ1535
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
榊原 涼太郎 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 二次元物質 / グラフェン / 炭化ケイ素 / インターカレーション / セレン化鉄 / 超伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、二次元超伝導物質であるセレン化鉄(FeSe)をグラフェン/炭化ケイ素(SiC)基板界面に作製し、大気安定かつデバイス応用に適した新規へテロ構造を創製することである。具体的なアプローチとしては、まずSiC基板の熱分解により形成したグラフェン層に対して鉄をインターカレートし、グラフェン/二次元鉄/SiCへテロ構造を作製した。その後、この系をセレン雰囲気中で加熱し、グラフェン/SiC界面でのFeSe形成を狙った。 鉄インターカレーションを行った試料の原子分解能電子顕微鏡観察により、グラフェン/SiC界面に鉄を含む原子層が二次元的に整列していることがわかった。最終年度では、元素分析によって界面の二次元鉄の化学結合状態を詳細に調べた。さらに、第一原理計算による理論的アプローチも併用し、界面構造の原子レベルでの解明を目指した。その結果、グラフェン/SiC界面の二次元鉄はSiCに類似した結晶構造を有し、かつSiC基板と急峻な界面を形成していることがわかった。このような構造は、既存の鉄化合物の結晶構造とは異なるものである。最終年度において、このグラフェン/二次元鉄/SiCへテロ構造をセレン雰囲気中で加熱する実験も行った。得られた試料のX線光電子分光測定の結果、FeおよびSeに由来するピークがそれぞれ明瞭に観察された。従って、FeSe形成の直接的証拠は得られていないものの、グラフェン/FeSe/SiCへテロ構造が形成した可能性が示された。 FeSeは100 Kに迫る高い超伝導転移温度を示す二次元物質である。しかし大気中では極めて不安定であるため、超高真空環境下での作製と評価が必須であった。ここで本研究によって、グラフェンで保護された大気安定なFeSeがSiC基板上に作製できる可能性が示された。このような新規へテロ構造の創製は、次世代超伝導デバイスの発展に資するものである。
|