2022 Fiscal Year Annual Research Report
古浄瑠璃本文・挿絵総合データベース構築と活用の研究
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22J14105
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松波 伸浩 名古屋大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 古浄瑠璃 / 本文 / 挿絵 / データベース / 整定 / 注釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4(2022)年度の研究実績は、以下の4点に集約される。 ①古浄瑠璃の一角を占める、金平浄瑠璃と呼ばれる作品群の後期~末期に当たる作品の構想に、異界や中世日本紀の神話を用いることで、時間的・空間的に作品の世界を拡張していることを論証し、査読付き全国学会誌に採録された(「後期の江戸版金平浄瑠璃の構想―先行作品の受容と改変―」、『日本文学』71巻8号掲載、2022年8月)。 ②本課題の中核をなす、古浄瑠璃の整定・注釈を蓄積する中で、古浄瑠璃を言語資料として扱い、語彙のニュアンスの解明に活用する研究手法を発想し、具体的には「たのもし」という語のニュアンスを、様々な用例を元に文脈を分析し、口頭発表した(「「たのもし」の心性―言語資料としての古浄瑠璃―」、東海近世文学会2022年10月例会)。 ③古浄瑠璃における悪について、寛文・延宝頃には寛永頃と比して著しい進展が見られることを指摘し、また主人公や作品世界における体制に楯突く逆賊に来歴を与えることで、両者の対立をより熾烈なものにしていることを論証、口頭発表した(「古浄瑠璃における悪と悪役の造型」、全国大学国語国文学会令和4年度冬季大会)。 ④古浄瑠璃におけるケレンについて、作中人物と読者観客との間に驚きや神威的な力、また不気味さを共有させる働きがあることを、詞章に即して論証した。これは読者観客にどのような情報を与えるか、また与えないかという語りの方法とも関連があることを口頭発表にて指摘した(「古浄瑠璃のケレン―詞章と演出―」、令和4年度名古屋大学国語国文学会)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文掲載については本年度2本を目標にしていたが、結果として1本に留まってしまった。 しかし口頭発表において、言語資料としての古浄瑠璃の性質や、古浄瑠璃に反映された悪や逆賊の造型、古浄瑠璃の語りの方法など、新たな研究の方法論や視座を提案出来た。これらは席上での質疑を踏まえ、論文化の途中にある。 論文本数の遅れはあるものの、方法論の進展を鑑みると、「おおむね順調に進展している」状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の土台たる、古浄瑠璃本文の整定・注釈、挿絵の言語化・タグ付けといった基礎作業を加速しつつ、ここまで口頭発表してきた研究成果を論文化して公表することを目指す。また、挿絵の研究に関しても一定の蓄積が生まれ、古浄瑠璃の内容理解に資する成果となりつつあるため、挿絵を用いた作品理解の方法論の確立も、次なる課題である。
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