2023 Fiscal Year Annual Research Report
ドレス状態を考慮した場の量子論による、検証可能なメモリー効果の解析
Project/Area Number |
22KJ1563
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古郡 秀雄 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ドレス状態形式 / 漸近対称性 / メモリー効果 / 赤外発散 / 場の量子論 / 散乱問題 / 平坦時空のホログラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究は主に次の2つに分けられる。以下でそれぞれの実績の概要を記述する。
[メモリ-効果に対する定量的予言を目指した研究]:スピノルを荷電粒子とする量子電磁気学の場合と、有質量スカラー場を含む線形重力理論の場合で、ゲージ不変なメモリー量をいくつか定義した。キックメモリーと呼ばれるクラスのメモリー効果がよく知られているが、それとは異なるタイプのメモリー効果が存在する可能性が示唆された。これらのメモリーの詳細な計算や、検証可能性についての議論は今後の研究に引き継いでいく。
[平坦時空のホログラフィ-を通した理論的な研究]:メモリー効果は「漸近対称性」・「軟粒子定理」のふたつと等価に結びつくという主張が、赤外三角関係として知られている。4次元漸近平坦時空に備わる漸近対称性は無限遠方の球面:天球上の関数自由度をもつ。これに関連して、4次元漸近平坦時空における場の量子論の散乱行列には、2次元共形場理論でよく知られるVirasoro対称性が存在する可能性が示唆される。そこで、4次元漸近平坦時空における場の量子論の散乱行列が、ある天球上の共形場理論(CCFT)の相関関数に対応するという予想が提案されている。 今年度はこうした理論的側面からの研究も行った。これまでに提案された対応関係の辞書においては、無質量場の2点相関関数が通常の共形場理論での振る舞いである冪関数的な振る舞いではなく、デルタ関数的振る舞いを示す。一方、3点相関関数は通常の共形場理論と同じ振る舞いであるため、この演算子積展開を考えると整合しない。そこで本研究では、3点相関関数のOPEと明白に整合する2点相関関数を与える対応関係の辞書を与えた。この修正した辞書では、散乱の入射状態に対応するCCFTの演算子をシャドウ演算子として定義する。また、有質量場の無質量極限と交差対称性の観点からも修正した辞書が支持されることを議論した。
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