2022 Fiscal Year Annual Research Report
インドール由来の不安定中間体を活用した多環式天然物の合成研究
Project/Area Number |
22J15523
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清水 宏明 名古屋大学, 創薬科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | アゾメチンイリド / 1,3-双極付加環化反応 / 天然物の合成研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
マロン酸ジエチルから数工程の変換を経て調製した既知のトリオールに対してアルキンとグリシンユニットを導入した。次に、ヨードアニリンとの薗頭カップリング反応と、金触媒を用いたインドール形成反応を行った。インドール3位へのホルミル基の導入に続く脱離基への変換、酸化段階の調整を経て骨格構築前駆体の合成を完了した。 続いて、骨格構築反応の検討に着手した。はじめに2つのBoc基に対して加熱による除去を試みたところ、基質の損壊もしくはインドール窒素原子の脱保護が選択的に進行した後、アルデヒドに付加してできるヘミアミナールを得るのみであった。次に、より低い温度で実施できるルイス酸条件を試みたところ、グリシン部位の窒素原子選択的にBoc基を除去することができ、インドール3位からのびる側鎖上でエナミンの形成を確認した。そこで、このエナミンからアゾメチンイリドへと変換するために溶媒や温度、添加剤の検討を行ったが、エナミンからの求核付加が進行してできる4環性化合物を得るのみであった。また、二つある窒素原子上の保護基の一方を別のものに変更したものを合成し、種々検討を行ったが基質が損壊する結果となった。分子内反応での検討の他に、構造を単純化したモデル基質で分子間反応での検討も行ったが、所望の反応を進行させることはできなかった。 以上の結果を受けて、「化合物の安定性の向上」と「エナミン形成の抑制」を目的として新たな骨格構築前駆体を設計し、現在はその合成に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マロン酸ジエチルから数工程の変換を経て調製した既知のトリオールに対してアルキンとグリシンユニットを導入した。次に、ヨードアニリンとの薗頭カップリング反応と、金触媒を用いたインドール形成反応を行った。インドール3位へのホルミル基の導入に続く脱離基への変換、酸化段階の調整を経て骨格構築前駆体の合成を完了した。 続いて、骨格構築反応の検討に着手した。はじめに2つのBoc基に対して加熱による除去を試みたところ、基質の損壊もしくはインドール窒素原子の脱保護が選択的に進行した後、アルデヒドに付加してできるヘミアミナールを得るのみであった。次に、より低い温度で実施できるルイス酸条件を試みたところ、グリシン部位の窒素原子選択的にBoc基を除去することができ、インドール3位からのびる側鎖上でエナミンの形成を確認した。そこで、このエナミンからアゾメチンイリドへと変換するために溶媒や温度、添加剤の検討を行ったが、エナミンからの求核付加が進行してできる四環性化合物を得るのみであった。より反応をシンプルにして解析を容易にすることを目的に、構造を単純化したモデル基質での検討も行ったが、所望の反応を進行させることはできなかった。 以上の結果を受けて、「化合物の安定性の向上」と「エナミン形成の抑制」を目的として新たな骨格構築前駆体を設計し、現在はその合成に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は研究計画に沿ってインドール化合物の合成とそれを使った鍵反応の検討を進めてきたが、インドール部位(出発原料と想定中間体、生成物を指す)の安定性の低さが実験結果から示唆された。また、環状アゾメチンイリドを発生させる側鎖では、脱水縮合は進行するもののエナミンの生成が優先してしまい、それに伴う求核付加反応が進行した。これらの結果から、所望の骨格構築反応を進行させるためには、次の2つの課題を解決する必要があるとわかった。「(1)反応に用いる化合物の安定性の向上」、「(2)エナミン形成の抑制」である。(1)については、インドールからニトロフェニル基を有するエノンへと変更することで解決できると考えた。(2)については、中間体であるイミンのα位にエキソオレフィンを導入しておくことで引き抜けうる水素が無くなり、エナミンを発生させることなくアゾメチンイリドへと導けると考えた。 上記のこと踏まえて、新たな骨格構築反応の前駆体を設計し、その合成に取り組む。薗頭カップリングで2-アミノフェニル基を導入していた個所を2-ニトロフェニル基に変更する。その後、電子不足なアルキンの反応性を利用してケトンへと導き、酸化段階の調製を経て新たな骨格構築前駆体の合成を完了する。この前駆体を用いて、骨格構築反応の条件検討・最適化を行う。三環性骨格構築後、ニトロフェニル基を足がかりとして、ベンゾアゼピン骨格の構築に取り組みコプシユンナニンLへと導く。
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