2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KJ1592
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
酒井 嵐士 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | ICE閉部分圏 / t構造 / ブリック / 有限群の表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に2つの研究に取り組んだ。 1つ目の研究では本研究課題の研究対象である加群圏のICE閉部分圏と導来圏のt-構造のaisleの間の関係を調べた。まずアーベル圏の導来圏においてhomology-determinedという性質を満たすaisleがアーベル圏におけるICE列を導入することによって分類できることを示した。ICE閉部分圏とはねじれ類とwide部分圏の共通の一般化であり、ICE列はアーベル圏のICE閉部分圏の列で定義される。以上の結果は既に知られているアーベル圏のwide部分圏と導来圏のthick部分圏の間の対応を含み、アーベル圏のねじれ類と導来圏の中間t構造の間の対応と可換になる。またICE列はねじれ類の束の純束論的性質で特徴付けられることを示した。これによってねじれ類の束における束論的な操作のみでt構造を構成する手法を得た。 2つ目の研究は有限群の表現論におけるブリックとねじれ類の研究である。この研究は東京理科大学の小境雄太氏との共同研究である。ブリックとは単純加群の一般化であり、多元環の表現論においてはtau傾理論との関連がある重要な研究対象である。またセミブリックという互いにHom直交するブリックの集まりはwide部分圏と対応することが古くから知られている。本研究ではwide部分圏を用いることでCliffordの定理のブリック版を与えた。Cliffordの定理とは半単純加群に関する定理であり、有限群の表現論における基本的な定理である。また有限群の表現論における基本的な操作である誘導関手と制限関手によって有限群とその正規部分群の表現の圏におけるねじれ類の間の対応を得た。これは小塩と小境による台tau傾加群に関する結果に部分圏で解釈を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は加群圏のICE閉部分圏に対し導来圏における解釈を与えることができた。当初は難航していたがICE閉部分圏の列を用いることで良い対応を得ることができた。またICE閉部分圏の列の対応物はt構造のaisleであり、こちらも導来圏の拡大閉部分圏である。よって本年度は加群圏と導来圏の拡大閉部分圏の関係への理解を深めることができたと言える。また有限群の表現論においてねじれ類とwide部分圏を考えることで既存の結果に新しい視点を与えることができた。これは拡大閉部分圏の研究の有限群の表現論への応用を与える可能性を含んでいる。以上のように本年度は拡大閉部分圏の研究が加群圏の範囲を超え導来圏におよび、さらには応用される可能性を模索することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果をもとに以下の2つに取り組む。 有限生成とは限らない一般の加群圏におけるICE閉部分圏への理解を深める。まず一般の加群圏においてICE閉部分圏をねじれ類とwide部分圏を用いて理解することを目指す。一般の加群圏におけるねじれ対については古くから調べらている一方で、wide部分圏については近年にいくつか調べられている。これらの結果を統合し一般の加群圏におけるICE閉部分圏を調べる。これが達成されることで、本年度に得られたt構造とICE列との関係がより精密に理解できると考えている。また環が可換の場合にt構造を環のスペクトラムを用いて理解する手法が知られているが、この結果との関連も調べる。 また有限群の表現論における拡大閉部分圏に関する研究も引き続き行う。具体的には導来圏におけるt構造やthick部分圏を理解することを目指す。本年度は適切な状況においてねじれ類のみならずtwo term simple-minded collectionが制限関手で保たれることを示した。そのため同様の状況で導来圏のt構造が制限関手で保たれることを期待するのは自然であり、これを行う。また誘導関手でこれらが保たれることも調べる。導来圏のt構造やsimple-minded collectionは導来同値を引き起こすため、以上の研究が達成されると群環の導来同値をより詳しく理解できると期待される。
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Causes of Carryover |
本年度は5度の講演を行った。そのうち1つは旅費が支給され、もう一方はオンラインであったため旅費が想定の額を下回った。 次年度はより積極的に集会等に参加する。
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