2022 Fiscal Year Annual Research Report
カスケードプロセスを用いた高電界テラヘルツパラメトリック発生器の開発
Project/Area Number |
22J20963
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
嶺 颯太 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 非線形光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が開発している光注入型テラへルツパラメトリック発生器 (is-TPG)はテーブルトップサイズでありながら巨大な自由電子レーザーを凌駕する100 kW という高強度THz 波パルスを発生し、単一周波数発振かつ広帯域周波数可変性(0.4から5.0 THz)を有する。現在is-TPGでは、強い励起光が起こすカスケードプロセスにより発生する高次ストークス光へのエネルギー流出が、変換効率向上に向けた課題である。本研究は、高次ストークス光が結晶励起することで発生するカスケードテラヘルツ波を結晶外部に取り出すことで、is-TPGの励起光からテラへルツ波への変更効率向上を目指し、高電界テラへルツ波発生を実現するものである。 カスケードテラへルツ波は通常発生するテラヘルツ波と同一周波数であり、結晶外部に取り出せれば大幅な変換効率向上が見込まれるが、角度位相整合条件により結晶深部で発生するため、結晶の大きな吸収ロスにより外部への取り出しは従来困難と考えられていた。今年度は、高強度光注入光の導入と励起光の結晶端面で全反射する手法を導入し、カスケードプロセス発生位置を結晶浅部にシフトすることで初めてis-TPGからのカスケードテラヘルツ波を観測した。現状発生したカスケードテラヘルツ波は、高効率に多段的なパラメトリック増幅をされていないため、来年度は、結晶角度等の最適化を行い、カスケードテラヘルツ波の高強度化を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、カスケードプロセスプロセスを用いた高電界テラへルツパラメトリック発生器の開発を目指した。まず、カスケードプロセスの促進のため、注入光強度を最適化した。従来の光注入型テラへルツパラメトリック発生器では、微弱な連続光を使用し4次までのストークス光が確認されていたが、高強度光注入をすることで7次以上のストークス光が観測された。次に、カスケード的に発生したテラヘルツ波の結晶外部への取り出しを目指した。カスケードテラヘルツ波は、ノンコリニア位相整合の影響で結晶の深部で発生するため、取り出し効率が低下する。解決策として、高強度光注入による発生閾値の低下および励起光を結晶端面に反射すること、カスケードテラヘルツ波発生位置を結晶浅部にシフトさせ、そのうえでテラヘルツ波取り出し用のシリコンプリズムカプラ圧着位置を最適化した。その結果、2次から3次までのカスケードテラヘルツ波の観測に成功した。それぞれのテラヘルツ波は1次のテラヘルツ波と同じ周波数、異なる発生角を有することを確認した。カスケードプロセスを利用したことにより、1次のみのテラへルツ波を取り出したときと比べ約1.5倍の出力を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
現状発生したカスケードテラヘルツ波は、高次ストークス光出力から予想される出力と一致しており、2次から3次までのカスケードテラヘルツ波結晶からの取り出し効率は十分高いと考えられる。来年度は、さらなる高出力化に向け4次以降のカスケードテラヘルツ波の高効率取り出しを目指す。そのためには、2次、3次ストークス光に高強度光注入することで、4次以降のカスケードテラヘルツ波の発生位置を結晶浅部にシフトさせる。また、テラヘルツ波発生に使用されなかった残留励起光を用いたテラヘルツ波増幅についても、発振原理に立ち返り慎重に解析することで、結晶内多段テラへルツ増幅を検討する。
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Research Products
(9 results)