2021 Fiscal Year Annual Research Report
擬正則曲線を用いたフレアーホモロジー的観点からの接触幾何学の研究
Project/Area Number |
21J20300
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柴田 泰輔 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 埋め込まれた接触ホモロジー / レーブ軌道 / 周期解 / 三次元接触多様体 / シンプレクティック幾何学 / フレアーホモロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
埋め込まれた接触ホモロジー(ECH)ではECH指数が定義される。ECH指数が1と2のもののが理論の構成では必要となる。特にECH指数2を実現する擬正則曲線の数え上げにより、U-mapと呼ばれる代数構造がECHに定まり、したがってECH指数が2の擬正則曲線のモジュライ空間を考えるのが重要となる。本年度では、この擬正則曲線のモジュライ空間の振る舞いを綿密に調べた。特に、D. Cristofaro-Gardiner、M. Hutchings 及び D. Pomerleanoが提出した「有理ホモロジー球面の接触構造が(力学系的な意味で)非自明で非退化であるとき双曲周期解は存在するか」という問題に対して以下の通りいくつかの結果を得た。まず(1)楕円型周期解が存在するとき必ず双曲周期解が存在することを示し、その後そこでの結果及び手法を用いて(2)基本群が奇数オーダーのレンズ空間の場合と(3)三次元球面における最小周期解の円盤から誘導されるConley-Zehnder指数が3以上である場合について肯定的に解決した。いずれの証明でもU-mapを実現する擬正則曲線のモジュライ空間を適切にコントロールすることによって得られた。また、(3)の条件は古典的にハミルトン力学系の周期解問題に表れるものであり、ECHの古典的にハミルトン力学系の周期解問題への応用とも考えられる。以上の結果は順次arxivに公開しており、また査読雑誌に投稿中もしくは投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各々のECH指数を満たす擬正則曲線の性質を調べることが当初の目的の一つであった。その中でECHの構成について現れる重要な対象の一つであるECH指数2の擬正則曲線のモジュライ空間の性質を解析することにより、さまざまないくつかの状況下で問題を肯定的に解決でき、また更なる応用の可能性を示唆することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
(2)基本群が奇数オーダーのレンズ空間の場合と(3)三次元球面における最小周期解の円盤から誘導されるConley-Zehnder指数が3以上である場合において正双曲周期解の存在性を証明したが、その中で「被覆空間においてのECHの考察」および「レーブベクトル場に対するglobal surface of sectionとなる曲面の存在性」が重要となった。また、これらの条件は正双曲周期解の存在性を超えて楕円型周期解の存在性への応用も示唆しており、楕円型周期解の存在性を含め同様の手法が成り立たないかどうか研究を進める。
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