2022 Fiscal Year Annual Research Report
硫気孔原における極限植物ヤマタヌキランのAl耐性進化の解明
Project/Area Number |
21J21257
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長澤 耕樹 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 適応進化 / 酸性土壌適応 / 低pH耐性 / 極限植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
火山生協酸性土壌に生育するヤマタヌキランの低pH耐性の遺伝的基盤を解明すべく比較発現解析による低pH耐性候補遺伝子の網羅的探索を実施した.ヤマタヌキランと姉妹種であるコタヌキランについて,pH(=5.5, 4.5, 3.0, 2.5, 2.0)と処理時間(0, 1, 6, 12, 24時間)の各条件についてそれぞれ5処理区を設定し,根における遺伝子発現量を比較した.その結果,両種で共通して低pH処理(pH=3.0 vs 5.5)に応じて発現量が上昇した遺伝子の中には,先行研究にて低pH耐性とAl耐性に関与することが指摘されていたSTOP1転写調節因子の下流遺伝子が多く含まれていた.その一方で,低pH条件下でコタヌキランに比べてヤマタヌキランで高い発現量を示した遺伝子には,キシログルカンをはじめとした細胞壁形成に関わる遺伝子のほか,細胞内の過酸化水素調整やリグニン合成・細胞壁伸長に関与するクラスⅢペルオキシダーゼ遺伝子が多く含まれていた.また,ゲノムリシーケンスデータを用いて種間で分化した構造変位領域をゲノムワイドに探索したところ,ヤマタヌキランで約400kbの挿入領域が存在することが明らかとなり,その領域に多数のペルオキシダーゼ遺伝子が座乗していた.以上から,種分化以前からSTOP1下流遺伝子が低pHに応答して発現していた一方で,低pH耐性の獲得にはペルオキシダーゼ遺伝子の獲得が重要であった可能性が示唆された.今後はペルオキシダーゼ活性阻害剤を用いてペルオキシダーゼが実際にヤマタヌキランの低pH耐性に関与しているのか検証するほか,QTL解析等から候補遺伝子のさらなる探索を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の結果を受けて,当初予定していたAl耐性遺伝子の探索から低pH耐性遺伝子探索へと変更となったものの,比較発現解析等から候補となる遺伝子の探索に成功したものの,ゲノムリシーケンスデータを用いた解析についてはさらなる検討が必要と考えられるため.
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Strategy for Future Research Activity |
ペルオキシダーゼ遺伝子群がヤマタヌキランの低pH耐性に関与するかどうかを阻害剤を用いた栽培実験により明らかにする.さらに,QTL解析を実施することでさらなる遺伝子の絞り込みを試みる.
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