2021 Fiscal Year Annual Research Report
懐かしさ感情の生起メカニズムの解明:再認記憶の二重過程モデルに基づく検討
Project/Area Number |
21J21921
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 寛香 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 懐かしさ / 自伝的記憶 / 自己不連続性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,懐かしさの生起メカニズムを明らかにすることを目的として,自伝的記憶に関する研究 (研究1)と,自己不連続性に関する研究 (研究2)をそれぞれ実施した。 研究1は,自伝的記憶の内容の抽象度 (一度きりの出来事,繰り返される出来事,自伝的事実,自己知識)・現在からの時間の距離 (小学校時代,高校時代,1か月前)と懐かしさの強度の関わりを検討した。実験を行ったところ,小学校時代を想起する条件では繰り返される出来事と自伝的事実の想起時に懐かしさが高く,高校時代を想起する条件では一度きりの出来事と繰り返される出来事の想起時に懐かしさが高いという結果が得られた。これらの結果は,高い懐かしさを伴う記憶の内容は現在からの時間の距離によって異なること,懐かしさの生起に関与する記憶は一度きりの出来事 (エピソード記憶)だけではないことを示した。 研究2は,現在の恐れや不満と共に生じる自己不連続な状態に対抗するために懐かしさが生じる,という不連続性仮説を検証した先行研究の概念的追試を行った。質問紙調査を行ったところ,2年以内に生じたネガティブな生活の変化と懐かしさを感じる傾向は有意な相関を示さなかった。また,実験を行ったところ,短い文章の呈示により操作された自己不連続性 (ネガティブな自己不連続性条件,ポジティブな自己不連続性条件,自己連続性条件)は懐かしさの強度に影響を与えなかった。これらは,先行研究と異なる結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,自伝的記憶に関する研究 (研究1)を当初の予定通り実施することができた。その一方で,環境の変化が懐かしさ生起に与える影響の研究を実施することができなかったが,その研究と関連がある,自己不連続性に関する研究 (研究2)を代わりに実施した。これらの状況を踏まえ,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1の知見については,これまでに得られた実験結果とあわせて論文化する予定である。また,研究2において先行研究と異なった結果が得られた要因として,(1) 自己不連続性の測定方法および操作方法が不適切であること,(2) 文化差の影響,の2点が挙げられると考えた。よって,今後の研究では,実施する課題内容を変更しながら不連続性仮説の検証を行う予定である。
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