2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト膀胱癌の病理学的・遺伝学的特徴を再現可能な新規のマウスモデルの樹立
Project/Area Number |
21J22419
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 健治 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 膀胱癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒト膀胱癌の遺伝的・組織学的特徴を兼ね備えた浸潤性膀胱癌マウスモデルを確立することである。さらに同モデルを用いてKmt2c 変異の有無によるマウス膀胱癌の表現型の違いを評価し、ヒト膀胱癌におけるKMT2C の意義を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
尿路上皮オルガノイド培養系の樹立し、腫瘍形成を得た。今後、Trp53のstatusの違いにより、腫瘍形成能に差があるのか実証実験を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
Krt5発現細胞特異的にTrp53変異とCas9を発現するKrt5CreERT2/+:Trp53R172/+: LSL-Cas9マウスの膀胱内にPten・Kmt2cのsgRNAを発現するアデ ノ随伴ウイルス(AAV)を注入することによって、膀胱癌が発生することを確認したが、本モデルは腫瘍形成の頻度が低く、発生までに数か月か かるなど、疾患モデルとしては非効率的で実用性の面で難があった。その原因としては、生体内ではCre-LoxPシステムによる遺伝子組み換え、 ウイルス感染、CRISPR/Cas9システムによる遺伝子編集の効率が低いことが考えられた。そこで、より高効率に癌化させられる利便性の高い研 究モデルとしてオルガノイドを用いることを着想した。 尿路上皮オルガノイド培養系の樹立 Krt5陽性細胞にTrp53変異とCas9及びGFPの発現を誘導したマウスの膀胱を摘出し、回収した尿路上皮細胞からGFP陽性細胞を分別して3次元オル ガノイド培養を試みたところ、GFP陽性Krt5陽性細胞を起源とするオルガノイド (K5-mUrorganoid; Trp53R172H/+) の樹立に成功した。さらに オルガノイド培養下では生体内よりもはるかに効率的にAAVによる核酸導入が可能であることを確認した。またそれらをin vivo移植 (同所性・ 皮下・腎被膜下)することにより高率に膀胱癌が発生することを確認した。また、これらの腫瘍はsquamous differentiationを伴い、腫瘍内heterogeneityを有していることを確認した。またこれらの腫瘍では、Trp53 R172H/+ のWT alleleが消失し、LOH化しており、腫瘍形成に寄与して いる可能性があることが分かった。そこで、TCGA dataベースでもヒト膀胱癌ではTP53変異の多くでLOHとなっていることを確認した。今後、Trp53のstatusの違いにより、腫瘍形成能に差があるのか実証実験を予定している。
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