2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J23225
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 孝平 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 高大接続 / 教育接続 / 探究学習 / 移行 / トランジション / 対話型論証 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 高大接続・移行に関する理論的検討――日本における高校・大学間の教育接続に関する近年の動向をレビューし,教育接続には,「移行期に焦点化した教育接続」と「大学の学びを高校で先取りする教育接続」のタイプの2つのタイプがあることを明らかにした。
2. 高校の探究学習を通じた高大接続についての実証的検討――これまで調査してきた工学部の大学4年生を対象として行った半構造化インタビュー調査の結果をふまえ,高校の探究学習と大学における卒業研究との間の教育接続について検討した。また,高校で探究学習を経験したことのある大学3年生 4名(これまでの調査対象3名と新たに追加した薬学部の学生1名の計4名)に実施したインタビュー調査の結果に基づき,日本における高校から大学への学生の移行の様相について検討を加え,学生が経験している多様な移行実態を示した。この研究は,従来の移行概念を捉え返した点に学術的意義がある。さらに,高校での探究学習の成果や探究学習を通して身についた能力を評価する探究型大学入試の設計・運営プロセス及び大学における教育的取組との接続実態について検討することで,同大学入試が有する高大接続観を明らかにした。
3. 対話型論証を取り入れた高校の探究学習に関する実践的検討――前年度に引き続き,対話型論証(ある問題に対して,他者と対話しながら,根拠をもって主張を組み立て,結論を導く活動)を取り入れた探究学習の実践を行っているX高校にてケーススタディを行った。探究学習を終えた高校3年生を対象として,高校1年から高校2年にかけて探究学習への意識がどのように変化したのかについて検討を加えた。これまでの実践的研究の成果をふまえ,高校生向けのワークブックを出版するとともに,Webサイトの構築を行い,教育現場への実践的貢献を果たした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 高大接続・移行に関する理論的検討――実証的研究の成果を「高校・大学間における教育接続タイプの特徴」として『大学教育学会誌』にまとめた(5月)。
2. 高校の探究学習を通じた高大接続についての実証的検討――研究成果を「高校の探究学習と大学における卒業研究の教育接続についての検討―研究大学に 在籍する理工系学生の語りに着目して―」と題して,大学教育学会第44回大会にて口頭発表を行った(6月)。また,探究型大学入試に関わる成果を「探究型大学入試における高大接続観―大学教職員へのインタビュー調査を手がかりに―」として『名古屋高等教育研究』に掲載された(3月)。
3. 対話型論証を取り入れた高校の探究学習に関する実践的検討――実践的研究の成果を「対話型論証を取り入れた高校の探究学習における生徒の学びの実態―探究学習終了後の高校生への調査をもとにして―」と題して,日本教育方法学会第58回大会にて報告を行った(10月)。また,『対話型論証ですすめる探究ワーク』(勁草書房)を共著で出版した(11月)。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 高大接続・移行に関する理論的検討――海外(主に英国)の高大接続・移行研究を広くレビューしたり,海外の研究者とのディスカッションを行ったりすることで,高大接続・移行研究の国際的な到達点と限界点を明らかにし,日本における高大接続・移行の実態を相対化させる。
2. 高校の探究学習を通じた高大接続についての実証的検討――これまで行ってきた接続ルート(進学校から難関大学へ進学)とは異なる接続ルートを経験した学生へのインタビュー調査を行う。このようなインタビュー調査の分析を通じて,これまで明らかにしてきた接続ルート(進学校から難関大学へ進学)を相対化させ,移行実態の多様性を描き出す。
3. 対話型論証を取り入れた高校の探究学習に関する実践的検討――これまでケーススタディの対象としてきたX高校の生徒集団(2023年度大学1年生)を対象として,今までの授業実践を通して得られた生徒の成果物(ポスターやレポート)に関わる質的データと,質問紙調査の量的データを用いて,学習者タイプごとに移行経験がどのように異なるのかを明らかにする。
|
Research Products
(11 results)