2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J23330
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱田 明日郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ベルクソン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の初め、「昨年度の成果を物質=質料に関するものとすれば、今年度の研究はむしろ形相=形式に関して進められる。 具体的にはベルクソンが創造というアイディアを明確に語り始める『創造的進化』と『道徳と宗教の二源泉』を読解対象として、 〈創造の要請〉に基づく彼の存在論的立場を明確化してゆきたいと考えている」という目標を設定したが、この目標は発表(「『道徳と宗教の二源泉』における神の概念と〈要請〉の存在論」、第74回関西哲学会大会 2021年10月23日)及び論文「『道徳と宗教の二源泉』における神の概念と〈要請〉の存在論」『アルケー』30号、関西哲学会)によって達成された。これに関連して、ベルクソンの質料形相論のはらむ奇妙な論点を解剖する発表(「ベルクソンにおける「質料の創造」の意義」、第72回美学会全国大会 及び「ベルクソンにおける複数世界論の意義」第1回日本哲学会秋季大会 )を行うこともできた。ところで美学会でおこなった発表の「知的努力」についての発表に関しては、アウトリーチ活動としておこなっているThe Five Books講義における『精神のエネルギー』講義にて、哲学の初心者と丁寧に内容を汲み砕く過程で提供した内容とのシナジーがあったため、今後も講義等のアウトリーチ活動には力を入れたいと考えている。さて、本年度の最後に行われる発表(「愛と物質『道徳と宗教の二源泉』における目的論的記述をめぐって」、2022年日仏哲学会春季大会)では、これまでは断片的・単発的でしかなかった諸成果を博士論文としてまとめ上げるポテンシャルを持った「逆向的目的論」 という新たなテーマを発掘することができている。従って、今後は模索のためにできるだけ多くの発表を行うというスタイルではなく、このテーマに沿った博士論文という一つの大樹を育てるように、着実に研究活動を行っていく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定されていた研究計画については部分的に変更もあったものの、新たな研究の成果や課題を見出すことがでいたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究課題は、「個体性」individualiteをもたらす発生論として中・後期ベルクソンの著作??『笑い』・『創造的進化』・「人格についての十一講義」(ギフォード・レクチャー)・『道徳と宗教の二源泉』を再構成するというものである。しかし、個体性に至る発生論哲学としてベルクソン哲学を再構成するさい、ベルクソンに差し向けられる問いは少なくない。これに応える形で研究計画を編み、哲学史における仮想敵との可能的な論争として、1900年代以降のベルクソン哲学の固有性を剔出したい。
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