2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J23330
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱田 明日郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ベルクソン |
Outline of Annual Research Achievements |
私は本年度冒頭、「個体性」individualiteをもたらす発生論として中・後期ベルクソンの著作、すなわち『笑い』・『創造的進化』・「人格についての十一講義」(ギフォード・レクチャー)・『道徳と宗教の二源泉』を再構成するという目標を掲げていた。そして具体的な研究課題として、①ベルクソンに固有な方法論の可視化、②観念論哲学の方法との対照、③歴史と創造の問題という三つの課題を掲げていた。
③については予定通り、福岡大学で6月に行われたPBJ International workshop: ‘Time and Biology in Bergson’s Creative Evolution’における発表 "What we are becoming and what we are not: Bergsonian view of the history of life" とそれにまつわる議論を通じて成果を上げることができた。この成果については、来年度日本哲学会『哲学』での論文投稿を行う予定である。 ①についても、12月末に日仏哲学会に投稿した「中後期ベルクソンにおける「創造」概念の追跡(1907-1914):『道徳と宗教の二源泉』に至るベルクソニスムの心理学的解釈の試み」にてかなり高い精度で具体化することができた。特に、「人格についての十一講義」の精読は、ベルクソンにおける意志の問題の重要性、そして振り返ってみればという常にベルクソニスムに伴走し続けていた「意志の欠如」というモメントの重要性をはっきりと認識させるものであった。とりわけ『創造的進化』から『二源泉』の線を追う時この議論は必須となるはずだ。博士論文に向けて、大きな論脈をまた一つ見出すことができた。 ②については、ベルクソン哲学と弁証法哲学との相当にラディカルな立場の違いに肉薄することはできたものの、今学期では明確な追いついていない状況であるが、来年度9月に日仏哲学会プレイベントの開催を有志で計画しており、こちらで相補していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果は着実に蓄積できているものの、本来の研究計画である哲学史的な考察を深めていくうち、ベルクソンがそもそも哲学史ひいては歴史についてどのような考えを持っている哲学者であるか、というメタ哲学史的な考察が必須であることに気付かされ、研究計画全体の再考を迫られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本来の研究計画である哲学史的な考察を深めていくうち、ベルクソンがそもそも哲学史ひいては歴史についてどのような考えを持っている哲学者であるか、というメタ哲学史的な考察が必須であることに気付かされた。研究計画にはない内容ではあるが、『笑い』、『創造的進化』、「人格性の講義」などの『二源泉』への移行期、そして『道徳と宗教の二源泉』という中後期ベルクソン哲学における「歴史」の考察、そして歴史記述に随伴する目的論的な発想について深く考察し、その内容を含んだ形で博士論文をまとめたいと考えている。
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