2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ1752
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱田 明日郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ベルクソン / 発生論 / 心理学 / 人格論 / 歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの三年間の研究成果を集大成し、博士論文を執筆した。博士論文の概要及び目次は次のとおり。 本論文は、『創造的進化』(1907年、以下『進化』と略記)と『道徳と宗教の二源泉』(1932年、以下『二源泉』と略記)を中心とするアンリ・ベルクソンの後期の諸著作に対して、〈発生〉の問題という通底するテーマを見出し、後期ベルクソン哲学について一貫した理解を与えることを目的とする。 第一章では、「人間種」の「意識」から回顧する仕方で生命進化を捉える「心理的解釈」という『進化』の方法の正当性を検討する。 第二章では、このような「心理的解釈」がはじめに導入された『進化』の「人格論」というトポスの通時的な展開を再構成する。本邦では未だ論じられることの少ない『進化』と『二源泉』の中間期のテクスト、ギフォード講義「人格性の問題」(1914)を読解することで、後期ベルクソン哲学の発生論の展開を浮き彫りにし、後期ベルクソン哲学が肯定する「創造」という事態をめぐって、ベルクソン的発生論の原理=根源が、「記憶」から「意志」へと推移していく次第を明らかにする。 「人格性の問題」講義で提示されている「意志」を原理とした「創造」は実のところ『二源泉』の「創造」概念を先取りしている。第三章ではこれを受けて、「創造」の原理としてもはや「意志」ではなく「情動」を掲げる『二源泉』において、どのような発生論が展開されているのかを、ベルクソンの宗教論の読解から明らかにする。そして本四章では、第二章で提示した「意志」のベルクソン哲学と、本論第三章で提示する「情動」のベルクソン哲学という対照を念頭に置きつつ、ベルクソンの道徳論を読解する。 最後に本論第五章では、以上のようなベルクソン的発生論において、「人間」が占める位置とその可能性を、ベルクソンにおける「歴史」の所在を問うことで明らかにした。
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