2023 Fiscal Year Annual Research Report
核生成機構の体系化とその速度論的モデル構築に立脚した合理的ナノ粒子合成戦略の確立
Project/Area Number |
22KJ1754
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
飯田 裕也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 核生成 / 核生成経路 / MDシミュレーション / ポピュレーションバランス / 粒子径分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では合理的なナノ粒子設計戦略の確立を目的とし,多様に変化する核生成経路を決定づける因子の解明と経路の影響を組み込んだ粒子径分布推定手法の開発を行う。本年度は(1)昨年度までに構築した経路予測モデルの拡張を目指した,電荷の経路への影響の検討,および(2)経路の違いによる粒子径分布への影響の評価に取り組んだ。 (1)については,電荷を有する溶質LJ分子を含む溶液系の核生成過程のMDシミュレーションを行った。その結果,非荷電系と同様に溶質間相互作用の強さに応じて,液クラスターを介して結晶化する経路と,クラスターが成長する前に結晶化する経路が観測された。一方で,非荷電系と異なり,本系ではまず溶質が数個から数十個集まった会合体を形成し,その会合体を構成単位として上記経路が進行することを見出した。そこで会合体を高分子とみなして経路予測モデルを拡張したところ,本系の経路変化を説明することに成功した。 (2)では上記経路予測モデルを利用して核生成経路を表現可能なポピュレーションバランスモデルを構築した。本モデルにより粒子径分布の時間発展を計算したところ,液滴が成長途中に結晶化するような二段階経路の場合に粒子径分布が狭くなることを見出した。さらにこの原因が,結晶化による成長速度の低下により,あとから生成した粒子の粒径が先に生成した粒子に追いつくことにあることを示した。すなわち,経路を適切に操作し「後発粒子の追いつき」を促進するという,従来と異なる粒子合成戦略をとることができることを示した。 研究期間全体を通じて本研究では,MDシミュレーションと熱力学に基づく理論的な検討から経路を物性値から予測する経路予測モデルの構築に成功し,経路を表現した数理モデルから経路が粒子径分布に与える影響を整理した。以上により,経路を制御することで粒子径分布を制御するための指針を与えることができた。
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