2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J00182
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 拓 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 地震活動 / ひずみ速度 / GNSS / HIST-ETASモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の地殻内の余震活動を除いた背景地震発生数とGNSS変位から推定されたひずみ速度との関係を調べた。 震源カタログには気象庁一元化処理震源カタログを使用した。1980-2010年までの深さ25km以浅の地震活動(M > 3.0)に対して、HIST-ETASモデル(e.g., Ogata, 2004)を適用した。余震活動を取り除くために、推定したパラメータを用いて各地震が背景地震活動である確率を計算し、各領域における背景地震発生数の計算に使用した。0.2°×0.2°ごとに計算した背景地震発生数と深畑他(2022)でGNSS変位を用いて推定されたひずみ速度を用いて計算した最大せん断ひずみ速度、ひずみ速度の2次不変量、水平主ひずみ速度の絶対値の大きい方との相関関係を調べた。対象領域は先行研究でひずみ速度の集中が指摘されており、地震活動も活発な新潟神戸ひずみ集中帯、奥羽脊梁地帯、山陰ひずみ集中帯、別府島原地溝帯を含む領域とした。 新潟神戸ひずみ集中帯と奥羽脊梁地帯の2つの領域において背景地震発生数(1980-2010年)とひずみ速度に有意な正の相関が見られた。奥羽脊梁地帯では、最大せん断ひずみ速度と比べて、ひずみ速度の2次不変量や水平主ひずみ速度の方が背景地震発生数とより良く相関することがわかった。ひずみ速度の推定に使用したGNSSデータの期間(1997-1999年と2006-2009年)と同じ期間の震源データを使用した場合も相関する傾向が見られたが、データ数の減少により、有意な結果は得られなかった。 山陰ひずみ集中帯と別府島原地溝帯の2つの領域においては有意な相関関係が見られなかった。プレート間固着による変動や局所的な変動を適切に除去することによって結果が改善する可能性が考えられる。 これらの研究結果について、国内学会や国際学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は先行研究でひずみ速度の集中が指摘されており、地震活動も活発な新潟神戸ひずみ集中帯、奥羽脊梁地帯、山陰ひずみ集中帯、別府島原地溝帯を含む領域について、余震活動を除いた背景地震発生数の空間分布とGNSS変位から推定されたひずみ速度の空間分布の関係を調べた。新潟神戸ひずみ集中帯と奥羽脊梁地帯の2つの領域においてM3以上の背景地震発生数とひずみ速度に有意な正の相関が見られることを示し、学会発表を行った。現在は、時間変化の議論が進められるように、M2程度の微小地震活動について余震活動を取り除く解析を進めている。 このように特別研究員として採用された以後、地震活動とひずみ速度の関係を調べることを進めており、学会発表できる成果を上げるなど、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
地震活動とひずみ速度との関係について時間変化の議論が進められるように、M2以上の日本の地殻内地震の背景地震発生数の時空間分布を評価する。震源カタログは気象庁一元化処理震源カタログを使用し、余震活動を取り除くdeclustering手法にはZaliapin and Ben-Zion (2020)を使用する。 ひずみ速度についても時空間分布を評価する。GEONETや大学の観測点のGNSSの水平変位から地震等による過渡的な変化を取り除いて対象期間における定常的な変位速度を推定し、Okazaki et al. (2021)の手法を適用してひずみ速度の空間分布を推定する。対象期間を時間方向にずらしながら推定することで時間変化の推定も行う。 推定した背景地震発生数とひずみ速度の関係を評価する。昨年度までの解析で新潟神戸ひずみ集中帯と奥羽脊梁地帯はM3以上の背景地震発生数とひずみ速度が相関する傾向が明らかになっているので、お互いのデータが時間変化しても相関する傾向が見られるか評価する。また昨年度までの解析で相関する傾向が見られなかった山陰ひずみ集中帯と別府島原地溝帯については、局所的な変動を除去してひずみ速度を改めて推定し、地震活動と相関するか評価する。また、ひずみ速度だけでなく、震源メカニズム解から推定された応力場との関係を考慮したせん断ひずみエネルギーと地震活動との関係も新たに評価する。上記の研究から得られた背景地震活動とひずみ速度(ひずみエネルギー)の関係を地震活動モデルに組み込んだ新たな物理統計モデルの開発にも取り組む。既存のモデルと比べてどの程度優れたモデルかをABIC値等を用いて評価する。得られた研究成果は国際学会、国内学会に参加して発表し、様々な分野の研究者と議論を深める。またオープンアクセス誌の投稿論文にもまとめる。
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Research Products
(6 results)