2022 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌のphenol代謝・酵素学を基盤とした糖尿病性腎症の予防と治療
Project/Area Number |
22J00724
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
及川 大樹 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 糖尿病性腎症 / 腸内細菌 / phenol / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病性腎症は糖尿病の進行に伴って発症する腎機能関連疾患の一種であり,本疾患の進行には食餌由来のアミノ酸から代謝されるphenolの関与が示唆されている.このphenolの生成にはヒト腸内に存在する細菌の酵素が関与すると考えられていることから,本酵素の活性を阻害し得る化合物を探索し,その阻害効果の解析,生理学的な応用性について検証を行い,本疾患の進行の予防・治療へと応用することを目指す. ヒト腸内でphenolの代謝への関与が示唆されている酵素Aおよび酵素Bの相同遺伝子を保有する菌株を広く探索したのち,代表的な菌株由来の遺伝子を大腸菌発現用ベクターに導入し,タンパク質の異種発現を行った.酵素Aおよび酵素Bの基質の基本骨格となるphenolの構造類縁物質を用いて,これらの中から前述の酵素の阻害効果を有する化合物の選抜を行ったところ,数種の化合物において酵素A・酵素Bへの高い阻害活性が確認された.速度論解析の手法を用いた酵素機能解析の結果,同化合物は特に酵素Aに対して,既往の阻害剤よりも低い阻害定数を示し,同疾患の進行の治療・予防への応用性の高さを窺わせた. ヒト腸内での存在が報告され,酵素Aまたは酵素Bの相同遺伝子を保有する菌種について,各菌種によるphenolの生成活性を解析し,phenolを高蓄積する菌種を明らかにした.今後の研究では,phenolを高蓄積する菌種を用いて,前述の酵素A・酵素Bの阻害剤候補化合物が同菌株のphenol生成を阻害し得るかを検証し,生理学的応用性の評価を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵素Aおよび酵素Bに対して高い阻害効果を有する化合物の探索においては,当初の計画以上に多くの化合物群から高阻害活性を有する化合物の発見に成功している.加えて,phenolを高蓄積する菌種を網羅的にスクリーニングできたため,前述の阻害剤候補化合物を用いた,菌体のphenol生成活性に対する阻害試験を実施する上での準備も整っている.
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Strategy for Future Research Activity |
Phenolを高蓄積する菌種を用いて,前述の阻害剤候補化合物が同菌種によるphenol生成活性を阻害し得るかを検証する.さらに,同化合物を動物実験用マウスに投与することで,糞便中のphenol蓄積量の減少に寄与し得るかを検証する.これらにより,前述の阻害剤候補化合物をヒトが摂取する上での生理学的応用性を検証したい.
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