2022 Fiscal Year Annual Research Report
行動伝染は情動伝染を促進するか:ニホンザルにおける共感性の基礎的機構の実験的検討
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22J01463
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
壹岐 朔巳 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 比較認知科学 / 認知バイアス課題 / 情動伝染 / 行動伝染 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトにおいて、共感性は円滑な社会生活を支える重要な心的機能である。本研究課題では、基礎的な共感現象である情動伝染と行動伝染との関係を、判断バイアス課題を用いて非ヒト霊長類を対象に検証し、共感性の進化的起源を探ることを目指す。課題の採択後、ヒト行動進化研究センターで飼育されているニホンザルを対象に、タッチパネルを用いたGo/Noーgo課題のトレーニングを行なった。その後、タッチパネルを用いたGo/Noーgo型判断バイアス課題に基づく実験系によって、ニホンザルの情動状態の変化を正確に推定できるかを確認するため、ポジティヴ・コントロール実験を行った。ポジティヴ・コントロール実験では、霊長類においてネガティヴな情動を喚起することが広く知られている捕食者関連刺激を使用した。実験によって取得したデータを統計的に解析した結果、捕食者関連刺激を呈示された個体は、その直後に呈示された曖昧刺激をより悲観的に判断していたことがわかった。この結果から、本実験系の有効性を確かめることができた。この結果をもとに論文を書き上げ、英語学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タッチパネルを用いた実験課題に関しては、被験個体のトレーニングが首尾良く進み、ポジティヴ・コントロール実験で本実験系の有効性を確認することができた。さらに、正情動と関連する表情シグナルがニホンザルの社会的相互作用場面においてどのように使用されているか分析した論文を執筆し、Animal Cognition誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
社会的な情動刺激を用いた本実験を行うために、追加の被験個体のトレーニングの実施、刺激の作成、実験プロトコルの整備などの準備を進める。本実験では、同種他個体によるネガティヴな情動あるいはポジティヴな情動を伴う行動の映像刺激を使用する予定である。映像刺激を呈示中の被験個体の行動をビデオ録画し、行動の伝染が起きていたか記録する。映像の呈示後に上述の実験系を用いた判断バイアス課題を行い、個体の情動状態を推定する。行動データと情動データを合わせて分析することによって、行動伝染が生じていた個体にはネガティヴあるいはポジティヴな情動も強く伝染しているかを検証する。
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