2023 Fiscal Year Research-status Report
リミットサイクルによる物理レザバー計算の力学系解析
Project/Area Number |
22KJ1786
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
明石 望洋 京都大学, 情報学研究科, 助教
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | レザバー計算 / 力学系 / 非線形物理学 / リミットサイクル / スピントロニクス / ソフトロボット / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な研究実施事項は、1. リミットサイクルの情報処理能力の理論解析、における解析手法の調査・適用と、2. 実モデルであるスピントロニクスデバイスと空気圧人工筋肉の情報処理への活用、における数値解析と実機実験である。 項目1について、共同研究者の実施する隔週セミナーに参加し、着目する理論解析手法の調査を進め、従来のエコーステートネットワークと呼ばれるリザバー計算に対する理論解析と得られた理論の数値検証を行った。 項目2について、スピントロニクスと人工筋肉双方の研究を進展させた。スピントロニクスに関して、昨年度自身が提案した多素子結合のフレームワークの計算効率の改善と複雑課題への適用を行った。昨年度、多素子結合系モデルを提案することで、従来の単一素子と比較して劇的に計算能力を向上させられることを報告した。しかし、数値実験において計算コストが非常に大きく、高々数十素子の結合系しか構成できないことが課題であった。本年度において、高並列の計算手法を提案することで、計算の大幅な高速化を達成し、昨年度モデルと同じ計算時間で数千素子の結合系の構成が可能になった。本結果は国際会議における査読付論文発表を行った。多素子の構成が実現可能になったことにより、昨年度までは困難であった画像分類問題への適用を行い、論文投稿を行った。空気圧人工筋肉については昨年度結果を得た、リミットサイクルやカオスといった様々なダイナミクスとそれらを含んだ分岐構造の埋め込みに関して、複数の人工筋肉の並列利用や結果の定量的評価など多数の実験を追加し包括的な解析を行った。本結果は国内学会・国際学会における口頭発表、発表賞の受賞、学術雑誌へ投稿し受理された(報告書執筆時点で出版済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究における項目1. 理論解析と2. 実モデル解析にそれぞれに対する達成目標に対して、項目1は計画よりやや遅れている一方で、項目2は計画より大幅に進展しているため、全体としてはおおむね順調に進展している。 項目1について、昨年度調査した位相共役の理論に基づくリザバー計算の力学系埋込能力について、当初予定していたリミットサイクルに基づくリザバー計算への直接の適用は困難であり、未だ達成できていないが、従来のエコーステートネットワークと呼ばれるリザバー計算を対象として、理論の証明やその数値実験を、共同研究の形で進展を得ている。 項目2については、スピントロニクスと人工筋肉の両対象において、数値シミュレーションと実機実験で、最先端レベルのベンチマーク性能や課題の実行を達成している。特に人工筋肉において達成した、リミットサイクルを含んだ分岐構造の埋込は、人工筋肉に限らない物理系における計算全般における初の成果であり、学会発表における受賞や高インパクトの論文誌への論文受理といった対外的にも高い評価を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
項目1. 理論解析に関しては、今年度実施したエコーステートネットワークにおけるリザバー計算の結果に基づいて、解析手法をリミットサイクルに適用することが主たる目的となる。ここでは当初の計画に基づき、理論と対応が付く平易な数値モデルを構築し、そのモデルに対する系統だった数値解析を平行して行うことで、理論解析の方向性を調査・調整する。 項目2. 実モデル解析においては、スピントロニクスと人工筋肉の情報処理への活用という観点で、当初の計画以上の成果を達成でき、すでに成果化も達成している。最終年度となる次年度は下記3点の実施を計画している。A. 国際学会における成果の発表や意見交換によって、成果の発信や将来の研究の方向性を模索する。来年度7月には国際会議4th Symposium on Machine Learning and Dynamical Systemsにおける登壇を予定している。B. 理論解析において得られた成果の適用。得られた理論が、実用的なモデルにおいてどのような応用可能性があるかを実験的に検討する。
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Research Products
(14 results)