2022 Fiscal Year Annual Research Report
乳児腸内フローラの形成機構の包括的理解と新規制御法への応用
Project/Area Number |
22J01706
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小酒井 智也 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ビフィズス菌 / 腸内細菌叢 / 共生 / 乳児 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳児期における有益な細菌叢形成は、生涯にわたり宿主の健康に影響を及ぼすことがわかっている。本研究では、乳児期の腸内細菌叢の形成メカニズムの解明、および有益な菌叢の形成手法の確立を目的とする。 乳児期の有益な腸内細菌叢の形成メカニズムの解明にあたり、2022年度は、乳児腸内に棲息する腸内細菌種の特定を実施した。具体的には、数名の健康な母乳栄養児の糞便サンプルから様々な培養条件によって腸内細菌種の単離を行った。種の同定は、完全長の16S rRNA配列を決定することで行った。その結果、乳児腸内でよく検出される既報の細菌種(いくつかのBifidobacterium種やStaphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalisなど)が大多数を占めていたものの、新種と推定されるBacteroides種も単離することに成功した。 本年度は、さらに上記の新種と推定されるBacteroides種について解析を実施した。具体的にはまず、次世代シークエンサーを用いてゲノム解析を実施した。その結果、3つのコンティグから構成されるクオリティの高いゲノム配列を取得することに成功した。また、当該ゲノム配列を公開されている既存のゲノム配列とAverage nucleotide identity解析により比較したところ、高くても95 %の配列類似性しか示さないことが明らかとなった。以上のことから、本菌種は、新種の可能性が高く、本菌種の性状を今後さらに解析することは、乳児期の腸内細菌叢を理解するうえで重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、乳児期の腸内細菌を多数単離し、新種と予想される菌種も単離することに成功した。単離菌株の取得により、翌年度以降に実施予定の生化学的試験が円滑に進むことが期待される。以上の理由にから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に取得した乳児糞便サンプルの菌叢解析を実施する。また、単離菌株およびそれらの基準株を用いて生化学的な試験を行う。具体的には、どのような条件下において増殖が抑制もしくは促進されるのかを菌株レベルで明らかにする。そして、本試験から得られた知見を活かし、乳児腸内でのビフィズス菌を中心とした有益な腸内細菌叢形成を促す条件を検討する。
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