2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Social Historical Study of Vocational-Supplementary Schools in Modern Japan
Project/Area Number |
22J11309
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀 雄高 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 実業補習学校 / 女子教育 / 裁縫教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、新型コロナウイルスの流行の影響を受けて、一部の史料所蔵機関から閲覧の許可をえられなかったため、計画を再考して二年目に実施する予定であった実業補習学校(実補)における女子教育の研究と関東地方の実補の事例研究を中心に取り組んだ。 国立教育政策研究所教育図書館、群馬県立文書館、群馬大学中央図書館、寒川文書館、福岡共同公文書館、神奈川県立図書館、千葉県文書館、千葉県立図書館、東京都公文書館、東書文庫、国立国会図書館、市立五條文化博物館を訪問して史料調査を行い、実補の設置状況や農業教育・裁縫教育など教育内容に関する史料、地方教育会雑誌、地方名望家の経営する養蚕結社の学習活動に関する史料などを撮影・収集した。 また、前年度までの史料調査で収集していた群馬県庁文書、滋賀県特定歴史公文書、伊香郡役所文書などの解読・分析を進めた。 以上の作業によって、(1)1890年代から1900年代にかけて実補の制度設計に携わった横井時敬の実補における農村女子教育構想を解明し、(2)主に群馬県を対象地域として、日露戦争後の実補における女子教育の実態を裁縫教育と裁縫教師をめぐる言説から明らかにした。 研究成果は、「明治後期の実業補習学校における女子教育と裁縫教師」と題して、教育史フォーラム・京都第49回研究会で報告した。また、報告内容を論文化して同会の会誌に投稿し、査読をふまえて修正中である。 2023年度は、引き続き各地の実補・青年訓練所、青年学校の史料を収集しつつ、研究成果を査読誌に投稿する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
想定していたよりも新型コロナウイルスの流行の影響を受け、一部の史料所蔵機関で十分な史料調査を行えなかった。そのため2年目に実施予定であった課題を前倒しして取り組み、(1)実補と女子教育についての研究と(2)関東地方の実補の事例研究に取り組んだ。その結果、年度内に前者の研究成果を学会で報告し、論文の投稿まで完了した。しかし、西日本・東北の実補の事例調査と関東地方の事例の考察する作業が次年度に持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は引き続き史料調査を行い、各地の実補とその後身の青年学校の事例研究を進めると同時に、博士論文の提出を見据えて研究成果を積極的に発表する。 まず、引き続き群馬県を中心に関東地方および長野県の実補の事例調査を進める。その際、実補を主要な対象としつつも、高等小学校、農業学校、実科高等女学校など、周辺の学校教育機関も視野に入れて、地域社会に学校教育機関が定着し、教育自体が変容していく様相を考察していく。前年度は1900年から1910年代の実補における女子教育の様相を明らかにしたが、本年度はこの研究成果をふまえて、実科高等女学校が登場した1910年代以降の実補における女子教育の実態を検討する。 西日本の事例研究については、滋賀県の事例を中心に名望家層の結社活動や教員の学校内外における活動が変化する過程にあらためて注目し、分析を進めている。具体的には、伊香郡を対象にして、乙種農業学校に転換した伊香農学校と木之本実科高等女学校、郡内の高等小学校、実補の設置過程や教育実態内容を検討している。さらに今後、周辺地域の実補についても実態を明らかにするために史料調査を進めていく。 本年度はさらに、1900年代に北海道のアイヌを対象として設置された実補についての研究に取り掛かる。具体的には、北海道虻田郡にあった北海道旧土人救育会虻田学園について、関係者が所有していた書簡や日記などの史料を収集する。これらの調査をふまえて、当時のアイヌの人々にとっての学校教育の意義を考察する また、特色ある実補として島根県大原郡(現雲南市)の海潮村実業補習学校、東京府南足立郡(現東京都足立区)の梅島農業補習学校、大分県大野郡(現豊後大野市)の大野郡農業補習学校などの事例を調査し、政策の変化と地域社会の教育要求の影響をうけて学校が形成されていく過程を考察していく。
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Research Products
(1 results)