2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ1814
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
KWAK MINSEOK 京都大学, 人間・環境学研究科, 講師
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 京都学派 / 植民地朝鮮 / 朴鍾鴻 / 田辺元 |
Outline of Annual Research Achievements |
植民地朝鮮の最重要哲学者である朴鍾鴻は、その思想の形成期に日本の哲学者から至大な影響を受けているが、既存の研究ではこの点が注目されてこなかった。本研究では、朴鍾鴻が日本の哲学者三木清から受けた影響を明らかにし、日韓哲学影響史の重要な一つの局面を明らかにした。またその過程で、朴鍾鴻が如何に三木清の哲学を克服しようとしたのかに注目し、朝鮮哲学の独自な論理を明らかにすることによって、日韓比較哲学の新たな可能性を導き出した。 なお、朴致祐、申南澈など植民地朝鮮の哲学者が日本の思想界で流行した「不安」の言説にどのように反応したのかを明らかにした。三木清、戸坂潤、小林秀雄らがお互いを批判しながら展開された「不安」の言説は、植民地朝鮮にまで転移し、多くの朝鮮の思想家をその論争に巻き込んだ。植民地の思想家は、日本発の言説を受動的に受け入れただけではなく、それを克服するための独特な現実認識を導き出した。以上の考察によって、本稿は、1930年代帝国日本の「不安」言説の越境現象を思想史の文脈で検証した。
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