2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J12476
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山科 直也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | ペロブスカイト / 人工超格子 / ダイヤモンド格子構造 / 梯子格子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
[111]方向に成長させたペロブスカイトを積層させてできる人工超格子について検討、今年度は、特に二次元ダイヤモンド格子構造に着目し研究した。 理論計算:3層毎のペロブスカイト構造の周期積層は、軌道の重なりからダイヤモンド格子構造が実現する可能性がある。この事から、[LaCrO3]3/[LaAlO3]3, [LaMoO3]3/[LaAlO3]3などの積層構造を考えてバンド計算を行った結果、波数空間のK-H方向に二次元ダイヤモンド格子構造のバンド分散と類似するバンド分散があらわれる事が分かった。これはt2g軌道の重なりが隠れた二次元ダイヤモンド格子を構成するよう配列している事を意味し、3層ペロブスカイトの人工超格子は、K-Hに対応する格子方向では二次元ダイヤモンド格子と同じ振る舞いをする。これを結晶構造の点から解釈すると、Bサイトの積層パターンがいわゆるABCABC積層する事、三回回転対称軸上にt2g軌道がある事から、波数空間ではダイヤモンドや閃亜鉛鉱構造のようなtetragonal結晶構造に対応するとみなせる。これが二次元ダイヤモンド構造のバンド分散をもつ。ダイヤモンドや閃亜鉛鉱のような構造の遷移金属酸化物は困難である。が、[111]方向に人工的にd電子系のペロブスカイトを積層する事により、同様の構造を作れる可能性が浮き彫りとなった。 薄膜実験:実験面ではパルスレーザー堆積法を用いてSrCrO3やSrMnO3の合成を試みた。750℃, 2×10-5 Paなど基板温度、酸素分圧、基板の種類を変化させながら合成した結果、パルスレーザー堆積法ではSrCrO3は合成できず、いずれもアモルファス薄膜となり、またSrMnO3はペロブスカイト構造ではなく酸素欠損秩序型のSrMnO2.5+dとなった。薄膜での人工超格子構造の作成にはさらに吟味が必要で、今後分子線エピタキシー法などを導入する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイヤモンドや閃亜鉛鉱に類似した構造をもつ遷移金属酸化物を作るのは困難であるが、本研究の遂行により、3層毎のペロブスカイトの周期積層により、同様の電子状態が実現することが明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
d3の電子状態に限らず、他の遷移金属イオンにも拡張してバンド計算を実施する。また、超伝導転移の可能性をFLEX近似のもとにEliashberg方程式の固有値計算から算出する。必要に応じてこれまで整備してきたVASPやQuantum ESPRESSO等を用いて理論的に磁気構造を明らかにする。 実験面では分子線エピタキシー法による人工超格子薄膜合成から、理論計算で予測した薄膜合成を試みる。また、薄膜にトポケミカル反応を組み合わせる方法により、酸素欠損面の導入方向を制御することや、異種アニオンを導入してヘテロアニオン超格子をつくることにも着目して物質開発の研究を柔軟に進める。得られた試料については、研究室で電気磁気輸送特性や磁気特性を吟味すると共に、放射光X線でのX線吸収分光測定や光電子分光測定へ展開する。これらによって、得られた新物質の機能性を明白にし、遷移金属イオンの価数状態や電子状態を明確にしていく。得られた結果は論文や学会発表にまとめる。
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