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2022 Fiscal Year Annual Research Report

前期デリダ思想における「表現の脱構築」について――包括的解釈の試み

Research Project

Project/Area Number 22J14798
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

森脇 透青  京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2022-04-22 – 2024-03-31
Keywordsジャック・デリダ / 哲学 / 美学 / 脱構築 / 表現 / 翻訳 / 国民国家 / 差延
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は哲学者ジャック・デリダの前期テクストを「表現」ないし「表出」をキーワードとして読解し、統一的に解釈するものである。2022年度の研究成果は論文2本(査読論文1、招待論文1)、発表4本(学会発表2、シンポジウム発表2)、翻訳1本である。
2022度は「表現」概念を研究するための基盤作りに精力を注いだ。その成果はとりわけ表象文化論学会における発表(11月13日)に結実している。この発表では、一九六三年初出の文芸批評に関するテクスト「力と意味作用」に着目し、ここで提出される「記入inscription」概念を伝統的な「表現」概念の批判として解釈しつつ、この概念がさらにデリダの現象学研究の成果と交差することを指摘した。これにより、「表現」概念批判から「記入」「差延」といった新たな表出プロセスへ至る、前期デリダ思想の大きな見通しを得ることができた。また「差延」概念については、脱構築研究会の協力を得て、書籍(森脇透青ほか『ジャック・デリダ「差延」を読む』読書人)にまとめ、公刊してすでに一般読者にも受け入れられている(23年4月6日公刊)。
他方、「表現」概念の広がりは前期に限らず中・後期のテクストにも見られることが研究の過程で明らかになってきた。たとえば中期デリダのシェリング論では、シェリングにおける絶対知の「表現」が、「翻訳」論の観点から批判される(日仏哲学会9月10日発表・論文化し投稿したものが掲載決定している)。またデリダの表現概念批判は、一貫して表現する「私」の内面性を複雑化するものであるが、それは後期にデリダが焦点化する主体の政治的アイデンティティの問題に深く関わる。この点については主催シンポジウム「いま、国家の脱構築?」(3月26日)内で発表した。
2022年度はこのように、表現概念の研究基盤をつくるとともに、その応用的な射程を視野に入れることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2022年度は論文投稿、発表の機会、シンポジウム・学術系イベントへの登壇など、公的な場面での露出(アウトリーチ活動)も含めて精力的に活動することができ、またその過程で研究の基礎を確立するとともに、前期デリダにとどまらない応用的な視点(「表現」概念の広がり、デリダにおける「翻訳」や「秘密」といった概念との連なり)を確認することもできた。
とくに、23年4月にデリダ思想の入門書として公刊することになった『ジャック・デリダ「差延」を読む』の元となったシンポジウム(22年8月27日)では、デリダが影響を受けた思想家たちのテクストを直に検討し(ヘーゲル、ニーチェ、フロイト、フッサール、ハイデガー、コイレ、ソシュール、ドゥルーズ、レヴィナス、バタイユら)、「差延」概念の思想史的な背景を精密に明らかにした。この結果、本研究は前期デリダを「表現」概念批判から「差延」の思想へ向かうプロジェクトとして理解することが可能になっている(その上で、「差延」概念において説明しきれない様々な要素が、中後期において展開されていくものと本研究は見立てている)。
他方で、コロナ禍の影響によるスケジュールの調整により、元来予定していた海外渡航(フランスでの資料調査)を行うことができなかった。そのため、進捗状況は(2)とする。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究の推進方策は、主に三点から特徴づけられる。
(1)前期デリダの現象学批判における精神分析と言語学の役割を明確にすること。フッサールにおける「表現」概念批判が展開される『声と現象』には、目立たない形で精神分析と言語学がそれぞれ登場している。この点を明示しつつ、『声と現象』における表現批判をまとめ、前期デリダを総括する(博士論文第一章に当たる)。
(2)前・中期への移行期における精神分析の役割を明示すること。表現概念批判は「内部」と「外部」の関係性に対する介入であるが、この批判は七〇年代に入ると徐々に形を変え始めるように思われる。とりわけ、精神分析との関わりはこの問題系に大きな影響を与えている。「フロイトとエクリチュールの舞台」および、分析家アブラハム/トロークに寄せられたテクスト(「Fors」、「私-精神分析」)を分析し、「クリプト」の論理について整理し、論文にまとめる。この箇所は、博士論文の第二章に相当する。
(3)後期デリダへ向けた展望。『死を与える』『パッション』『滞留』などに現れる「秘密」の概念の探求。前期デリダとは異なり後期デリダは「表現しえない(言表不可能な)秘密」を論じているように(一見すると)見えるが、この点にデリダの転回が存在するのかどうか検討する。この箇所は、博士論文の第三章に相当する。

  • Research Products

    (5 results)

All 2023 2022

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] 脱構築における抹消された「東方」:マオイズム、ソレルス、デリダ2023

    • Author(s)
      森脇 透青
    • Journal Title

      脱構築研究会オンラインジャーナル『シュプレマン』

      Volume: 2 Pages: 37-54

  • [Journal Article] ジャック・デリダによる中国語2023

    • Author(s)
      ヘクター・G・カスターノ, 森脇 透青(翻訳)
    • Journal Title

      脱構築研究会オンラインジャーナル『シュプレマン』

      Volume: 2 Pages: 1-21

  • [Journal Article] 夢と歴史性:デリダ『グラマトロジーについて』におけるルソーの「欲望」読解2022

    • Author(s)
      森脇 透青
    • Journal Title

      宗教学研究室紀要

      Volume: 18 Pages: 3~18

    • DOI

      10.14989/269406

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 哲学的大学の使命と「翻訳者の義務」:デリダにおけるカントとシェリングの哲学体系の差異2022

    • Author(s)
      森脇 透青
    • Organizer
      日仏哲学会
  • [Presentation] 前期デリダにおける〈言おうとすること〉と〈書こうとすること〉:現象学と批評を架橋するもの2022

    • Author(s)
      森脇 透青
    • Organizer
      表象文化論学会

URL: 

Published: 2023-12-25  

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