2023 Fiscal Year Annual Research Report
固体高分子形燃料電池の反応工学的カソードモデルの開発
Project/Area Number |
22KJ1899
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 輝 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | アイオノマー内酸素透過抵抗 / 反応速度の相対湿度依存性 / 物質輸送抵抗の定量 / 輸送抵抗と反応抵抗の比 / Tafel勾配の温度依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体高分子形燃料電池(PEFC)のカソード触媒層(CCL)内では酸素還元反応と物質輸送が競争している。発電効率を向上しかつ触媒の白金使用量を低減するには、カソード触媒層の最適設計が必要不可欠である。2023年度はCCL内の反応および物質輸送を説明する数学モデルを構築した。この数学モデルから触媒層厚さ方向の分布を説明し、反応および物質輸送のパラメーターを決定する手法を開発した。同時に輸送抵抗と反応抵抗の比である無次元数を決定することで、どの輸送プロセスが性能を低下させているかを定量的に議論可能なモデルを確立した。 市販の炭素担持白金触媒をカソードに用いて、電流電圧曲線の酸素分圧、相対湿度(RH)、セル温度依存性を測定した。高RHではプロトンの伝導度や導電性高分子中の酸素透過が促進されるため、同一界面電位差における電流密度はRHが高いほど大きかった。また、同一RHにおいて電流が酸素分圧の上昇とともに大きくなることも確認し、既往の研究結果と矛盾しなかった。基礎的な物質収支式から確立した触媒層の数学モデルが、電流電圧曲線のRH依存性を決定するパラメーターを得る手法を開発した。 電流電圧曲線の温度依存性について、温度が上昇すると反応速度および物質輸送パラメーターが上昇するため、同一界面電位差における電流は高温ほど大きくなった。同一界面電位差をパラメーターにした実験データのアレニウスプロットから、みかけの活性化エネルギーが界面電位差に依存しないことを確認した。電流が自然底数倍上昇した時に界面電位差がどれだけ上昇するかを表すターフェル勾配は絶対温度に比例するとされている一方で、酸素還元反応のターフェル勾配の温度依存性は明らかになっていない。電流電圧曲線の温度依存性は反応の活性化エネルギーのみに起因すると考え反応速度解析を行うと、より精度の高いパラメーターを得ることができることを確認した。
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