2022 Fiscal Year Annual Research Report
Global behavior of null geodesics and its application to black hole observations
Project/Area Number |
22J20147
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
天羽 将也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 重力理論 / 一般相対性理論 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
過去数年間,ブラックホールの観測がめざましい発展を遂げてきた。加えて、数理的側面からも、過去何十年にも渡って、ブラックホールの豊富な性質が明らかにされてきた。本研究では、この「ブラックホール」にまつわる概念について再考した。数理的に厳密には、ブラックホールは「光的無限遠と因果的曲線で結べない領域」として定義され、ブラックホールの外からブラックホールの中を観測することはできない。一方、わずかにブラックホールの外の領域についても、そこからの光などを遠方で観測することは、現実的にはほとんど不可能である。例えば、(典型的なクラスの)静的球対称ブラックホールにおいて、シャドウとして暗く見える領域の境界は、事象の地平面ではなく、それよりいくらか外側にある光子球面(photon sphere)と呼ばれる面で記述される。より一般に、静的球対称な時空においては、シャドウとして暗く見える領域の境界は光子球で与えられることが分かっており、また光子球に関する数理的に豊富な性質も明らかにされている。一方、対称性がない時空においては、光子球の定義は機能しない。対応する概念をどう定式化すべきか、研究者の間でまだ合意に達していない。そこで本研究では、光的無限遠への光の到達条件を探索し、これもとに、対称性を課さない時空に光子球を一般化したdark horizon を導入した。そして、現実のブラックホールを良い近似で記述するKerrブラックホールにおいて、dark horizon の形状を明らかにし、シャドウとの関係を議論した。これらの成果を、査読付き英文学術雑誌に1編にまとめて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
対称性の高い時空で便利な光子球面という定義を、対称性の低い時空でも機能するよう一般化した「dark horizon」について、当初2年目の計画であった具体的な形状の解明を1年目で行うことができたためである。まず光的測地線の光的無限遠到達条件についての研究を進めた。以前は角度方向および外向きの場合しか扱えなかった光的測地線の初期条件について、計量の無限遠近傍の漸近的振る舞いで決まる特定の角度までであれば、内向きに出した光的測地線についても適用できる光的無限遠到達条件を証明した。そしてこの条件をもとに、光子球面の一般化「dark horizon」の存在条件を与えた。また、dark horizonを、これまでの光子球面の一般化の定義と比較するために、Vaidya時空と呼ばれる時間変化する球対称ブラックホールにおける具体形を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を変更しなければならないような問題点は特に無いため、これまでの研究方針を継続させる。ブラックホールの周りの光源の運動がdark horizonに与える影響について、具体的な時空モデルとしてKerr時空、Vaidya時空を用いて探査する。このことにより、dark horizonが光源の運動を適切に取り込んだ初めての光子球面の一般化であることを明らかにしたい。
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