2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Pragmatist and Category-Theoretic Approach to the Grue Paradox
Project/Area Number |
22J20195
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉井 達哉 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 帰納推論 / グルーのパラドクス / 統計モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
McCullaghの統計モデルの圏論的特徴づけに基づいて、グルーのパラドクスの定式化を行なった。この圏論的枠組みにおいては、合理的な帰納推論を可能にするような妥当な統計モデルはある種の自然性を満たすことが要求される。 まず、「グルー仮説」「グリーン仮説」を標本空間上の確率分布族として定式化し、記述の枠組みを取り替える「グルー化」を一種の変数変換、即ち標本空間の変換の族として定式化した。その上で、ある固定された応答尺度の下で、グリーン仮説は圏論的枠組みにおいて妥当な要求される自然性を満たすことができるのに対して、グルー仮説はこの条件を満たすことができないことを示した。 ただし、こうした結果は、緑/青を基礎的とする枠組みからグルー/ブリーンを基礎的とする枠組みへと移行する「グルー化」の変換によって反転されてしまう。そのため、「上のような合理的帰納推論の基準がこのグルー化変換の下で不変でない」ということを以てして提起されたパラドクスへの解決は十分ではない、と論じる対称性論証が問題となる。これを「記述的グルーのパラドクス」本研究では、圏論的な観点から見ると「グルー化」が、妥当な変換に要求される自然性を満たさない非整合的な変換であり、そうした自然性を満たす典型的な単位系の間の変換(例えば、メートル法とヤードポンド法との変換)とは本質的に異なることを示した。それ故、記述的グルーのパラドクスで問題となった対称性論証は、実は「対称性」とは言い難い変換に訴えており、説得力を持たないことが結論できた。 こうした結果を論文にまとめ国際誌に投稿した。1件目は不受理となったため修正を行なった。直近に再投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度の早期に論文が完成し投稿まで進めたが、査読に時間がかかってしまい、結果が不受理だったため、そこから改訂を行なったため、結果として業績が形になっていない。 また、後続する別の研究も主に上の結果に依拠したものを考えていたため、同様に遅れることになってしまった。 また、本研究は数学や統計学といった哲学以外の分野についてのも実質的な量の学習を要するため、研究結果物を多く産むことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果を可能な限り早く出版することで、後続する研究を出版することを可能にする。また、数学や統計学などの分野の学習を哲学論文の執筆と並行してバランスよく行う。 具体的に後続する研究としては、まず、本年度の研究では主にグルーのパラドクスを共変量を持たない非回帰問題的な帰納推論の問題として扱ったが、グルーのパラドクスを回帰問題と関連させて論じる文献も少なからず存在するので、回帰問題として見られら限りでのグルーのパラドクスについても、本年度同様に統計モデルの圏論的な特徴づけという観点から考察を行う。その際、技術的には、AICなどのモデル選択基準を圏論的枠組みの中で位置付け直すことになる。哲学的には、仮説やモデルの単純性やアドホック性などの概念とグルーのパラドクスとの関係という、哲学者によって長く論じられてきたものの本年度の研究ではあまり前景化してこなかった問題について考察することになる。 さらに、本年度の研究は、グルーのパラドクスをブランダムなどによる我々の言説実践のプラグマティズム的な理解の中に位置付けた上で議論を進めた。こうした理解の妥当性を間接的に裏付けるためにも、現代の統計学の哲学と(言語的)プラグマティズムとの接続を行う。特に、メイヨーなどによる誤謬統計学とブランダムによる規範的語用論を接続することが可能であると同時に、双方の枠組みにとって実り多いことを示す。
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