2023 Fiscal Year Research-status Report
A Pragmatist and Category-Theoretic Approach to the Grue Paradox
Project/Area Number |
22KJ1934
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉井 達哉 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 帰納推論 / グルーのパラドクス |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、前年度に引き続き、N. Goodmanによって提起された帰納推論についての哲学的問題で あるグルーのパラドクスに対して、理論統計学者 P. McCullaghによって提唱された統計モデルの 圏論的な定式化の観点から分析を行なった。哲学者らによるこのパラドクスの解釈は、グルーのパラドクスを、【1】エメラルドの色に関する帰納的一般化の問題とみなすか、【2】観測時間を共変量ないし独立変数とする回帰問題とみなすかという二種類に分かれる。 本研究では、まず【1】のより正統的な問題設定に関して、(前年度に引き続いて)McCullaghの統計モデルの圏論的定式化の枠組みを用いて分析を行った。そうした分析の結果、元のパラドクスに含まれている問題を「仮説的パラドクス」と「記述的パラドクスの」という二つの異なるパラドクスとして抽出することができた。さらに、これら二つのパラドクスは、McCullagh流の圏論的枠組みにおいて要請される二種類の自然性条件を課すことで解決可能であることを示した。 さらに、今年度は【2】の観測時間を共変量ないし独立変数とする回帰問題として解釈されたグルーのパラドクスについても取り組んだ。この文脈では近年、モデル選択基準が重要であると考えられてきたが、この問題に取り組んできた哲学者らの総意によれば、そうしたモデル選択基準だけではグルーのパラドクスは解決できない。その原因は、そうした基準を適用するためにはそもそも候補となるモデルの集まりを予め特定する必要があり、その際の恣意性が避けられないことである。本研究では、統計モデルの圏論的定式化を回帰モデルに適用することによって、妥当なモデルに十分な制限を加えることができ、それによってこうした問題を解決できることを示した。また、ここで得られる制限は、表現的測定理論において提唱した「有意味性」の基準と一致することも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【1】の結果については、京都大学の大塚淳先生と共著で論文へとまとめ、The British Journal for the Philosophy of Science に掲載予定である。 【2】の結果については、 PSA Around the World という国際学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず今後は、【2】の問題に関して得られた結果を論文化する。
さらに、統計の哲学において古典的統計推論に対する哲学的な正当化を与えようとするDeborah Mayoらの「厳しさ説」を Robert Brandom の「推論主義」に接続することにも取り組む予定である。 すでにこのテーマに関して複数回の国内発表を行っており、そうした内容を早急に論文化したい。
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Causes of Carryover |
計算ミスにより端数が生じてしまった。小さい額なので、次年度の予算使用は元の計画通り行う。
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