2023 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ遺伝学を用いた細胞競合の分子機構の解明
Project/Area Number |
22KJ1951
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 涼 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞競合 / セプテートジャンクション / DNAダメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞競合とは、単独では生存可能な2つの細胞集団が同じ組織内に混在すると、片方の細胞集団のみが選択的に組織から排除される現象である。これまでにいくつかの遺伝子の変異が細胞競合を誘導することが報告されているが、細胞競合の生理的なトリガーは殆ど分かっていない。本研究では、大規模な遺伝学的スクリーニングにより単離された細胞競合誘導性の変異体(敗者変異体)について、次世代シーケンサーを用いたゲノム解析を行い、責任遺伝子を同定することで細胞競合の生理的トリガーを推定することを目指した。その結果、3つの敗者変異体の責任遺伝子としてGliotactin(Gli), nervana2 (nrv2), CG6443を同定した。Gliは三細胞の接着点であるトリセルラージャンクションの構成因子であり、ショウジョウバエの上皮バリアを担うセプテートジャンクション(SJ)に必要な遺伝子である。nrv2はNa+/K+ ATPaseのβサブユニットであり、ショウジョウバエにおいてはSJの構成因子である。セプテートジャンクションの形成・機能に関わる2つの遺伝子の変異が細胞競合を起こすこと、また細胞競合のモデルの一つであるscribbleもSJに必要な遺伝子であることから、SJの異常が細胞競合の生理的トリガーとなることが推定された。CG6443は哺乳類・酵母のRTF2のショウジョウバエホモログである。哺乳類ではRTF2はレプリソームにRNaseH2をリクルートすることで、DNA複製時に誤って取り込まれたリボヌクレオチドを除去し、DNAダメージを防ぐことが報告されている。ショウジョウバエ上皮に誘導したCG6443変異細胞クローンではDNAダメージのマーカーであるγH2Aが増加していたことから、ショウジョウバエのCG6443も同様の機能を持つこと、またDNAダメージが細胞競合の生理的トリガーとなることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究により細胞競合の新たな生理的トリガーとして、セプテートジャンクションの異常とDNAダメージの2つを推定することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、推定された2つの生理的トリガーによる細胞競合のメカニズムの詳細を明らかにする予定である。セプテートジャンクションに関わるGliとnrv2の変異が起こす細胞競合については、すでにメカニズムの多くが明らかとなっているscrib変異による細胞競合との共通点および相違点について検証していく予定である。CG6443の変異が起こす細胞競合については、変異細胞内でDNAダメージの増加が見られたことから、まずDNAダメージ応答の関与を検証していく予定である。
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